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親戚筋や身内同然の組関係者の中、若い組長級は九条だけだ。 それに続くのが本部長補佐になる紫藤。 そして他にいるのは組長の息子や娘婿等だが、実力は到底及ばない。 そうなれば嫉妬が沸くものだが、彼らは下座に座する屈辱も感じないらしい。 九条と紫藤の圧倒的な力を前にすれば、それも仕方ないといえた。 眞山が見る限り、彼らは九条に羨望の眼差しさえ向けている様だ。 それはさながら、プロに憧れる野球少年達と同じかもしれない。 それにしても…。 小一時間もすれば酒の席で気持ちも緩んできた親分衆が、さっそく本題に…と話題を敵対勢力の話から九条と紫藤へ向けての売り込みへと移ってきた。 「ところで将直のところの息子は結婚はせんのか?おいっ、相手はいるのか?あと、一臣。お前はどうなんだ!?」 敵対している組との関係が膠着している。 今はそれよりもより大きな力を手に入れることの方に重きが置かれている様だ。 これには毎度のことながら内心ハラハラしながら行方を見守るしかない。 「もっと言ってやってくれ!うちの息子はまーだ特定の女を作らん。見合いでもさせたいが、逃げてばかりで困る」 そう言ったのは紫藤の父親で紫藤組・組長の将直だ。 「ぐ…っ!親父っ!!」 余計なことを言うなと噛みついている間に、今度は別の親分からも九条へと話が向けられた。 「一臣もそろそろ年齢的にも腹を括れ。独り身だと面倒もあるだろう」 「男前で金も地位もあるんだ。女が放っておかんだろう?」 「相手が決まってないなら、うちのはどうだ?ワシと似てなくてなかなか美人だぞ!」 ガハハと笑う横で他の組長が割って入る。 「抜け駆けか?!うちの娘はどうだ一臣。スタイルいいし、肝も座っていて組長の嫁に適任だぞ?」 「…」 また始まった…という表情で九条が溜め息をひとつ。 その様子を眞山はポーカーフェイスで見守った。

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