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今はそれどころではないと内ポケットで暫く震えていたのを無視したが、直ぐにまた掛かってくる。
素知らぬ顔をしていたものの再び掛かって来て止まらないのは、平時を思うと異常だ。
今日は盃事で忙しいと知っているはずのこの時間にこれだけ掛かってくるとは、只事ではないと察する。
眞山が控えの部屋をソッと退席しようと立ち上がると、外崎の代わりに来ていた補佐・山城も同じ様に後を着いて部屋を出て来た。
迷惑にならない様にとその場から移動しつつスマホを取り出し確認すると、柳からだと分かる。
「…柳?」
この場合いつもなら中瀬から連絡が入る様になっているのだが、嫌な予感に眞山は直ぐ様折り返した。
そして何気に見ると、山城も同じ様にスマホを耳に当てていた。
「俺だ」
『申し訳ありません!!!』
僅か2コールで通話になると、電話口の向こうの柳が緊迫した声で謝罪を口にした。
柳からの報告を受けながら、眞山は心の底から重い何かが上ってくるのを感じた。
これは最悪な事態になったのではないだろうか。
外崎は良くも悪くも目立つ存在だ。
この拉致が紫藤組に対しての宣戦布告か、外崎自身に横恋慕している組の仕業かは分からないが、相当自信があるとみえる。
そして一緒にいたが為に祐羽も連れ去られたとなれば、九条の怒りは想像に難くない。
「クソッ!ふぅっ…とにかくお前らは無事なんだな?」
『はい。怪我人は居ますがなんとか』
「今から言う場所へ直ぐに来い!合流するぞ」
『分かりました』
それだけ言って通話を終えると、山城も同じく通話を終え殺気立って居た。
「どこのモンの仕業じゃ、マジで許さんぞ…」
「山城さん、まずいことになりましたね」
「眞山さん。そうじゃな…これは血の雨が降りかねん」
眞山と山城はお互いの部下の状況を共有すると、再び連絡を入れる。
ひとまずお互いの組が合流することが先決だ。
今すぐ駆け出したいがそれも出来ず、式の終わりまであと少し。
苛立ちをなんとか圧し殺して控え室へと戻る。
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