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昔の自分なら、眠れない夜は女のところへ行って憂さ晴らししていただろう。
しかし、祐羽と出会って以降は女と肌を合わせたことは一度もなく、今は全く考えられない。
笑える話しだが、どんな魅惑的な女が目の前で服を脱いだとしても一切食指が動く気配もない。
あの小さく細い少年がいいのだ。
遠慮がちで優しい、おっちょこちょいで泣き虫で、それでも強さもある祐羽が。
祐羽と恋人同士になったきっかけは、自分が無理矢理関係を結んだのが始まりだ。
大人げない酷い事をした自覚はあるが、強く惹かれたのだから仕方ない。
欲しいものは力ずくで奪って、のしあがって来た自分にはあの方法が手っ取り早く確実で…なりふり構っていられなかった。
結果として、今は祐羽と恋人同士という九条からすれば笑える程に甘い関係を築いている。
祐羽には悠々自適に過ごして欲しいと思い接している。
祐羽はあくまで一般人で、普通にしていて欲しいと。
けれど九条が裏社会とは無関係と思っていても、恋人として側に置いている限り全くの無関係とは言えないのではないだろうか。
周囲からすれば旭狼会会長の大切な存在だと強く認識される関係だ。
いくら九条が守ると思っていても、四六時中一緒に居られないのも事実で、現にこうして拉致されていることを考えれば既に無関係ではない。
原因は全て恋人という関係を持った自分のせいだとは分かるのだが…。
祐羽は高校に通っているただの男子高校生だ。
普通なら部活に励み、友達と遊びに出掛け、いずれは学校の女子生徒と交際などもして青春を謳歌していたかもしれない。
それを強姦して最悪な処女喪失を経験させ、
その上、自分の勝手で部活の制限をし、週末を束縛して何が悠々自適というのか。
祐羽が純粋で優しい性格をしていたから付け入れたに過ぎない関係だ。
そんな祐羽は、九条が怖くて従っているだけの可能性も今思えば否定出来ない。
同性で、しかも年齢差もある自分との交際は普通なら考えもしないだろう。
今頃もしかすると祐羽は、自分と恋人関係になったことを後悔しているのかもしれない。
「手放す、…のが、いいのか…」
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