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泣いて泣いて、泣きつかれて、いつもなら眠ってしまえる祐羽も今日ばかりは心が痛すぎて夢の世界へ逃避するなんてことは出来なかった。
嗚咽を堪えている間も、頭の中には九条の顔が浮かび、楽しかった思い出が走馬灯のように巡り、最後にさっき投げられた言葉が脳裏に甦った。
「九条さんっ、九条さん…」
グズグズと鼻を啜りながら名前をただひたすらに呼ぶ。
そうして泣いていると静かにドアが開いて、泣いている自分に九条が近づいて来て、それから優しく頭を撫でて抱き上げてくれる。
「九条さ…」
そんなことはあるはずもなく、都合のいい妄想に益々涙が溢れてきた。
顔を歪ませて声にならない声で再び泣き始めた祐羽は、シーツに顔を押し付けてグリグリと涙を拭く。
何で急にあんなこと言ったの?
「…そうだ。きっと僕が凄く迷惑をかけたからだ…だから」
だからあんな風に言ったんだ。
九条さん、僕のこと嫌になっちゃったのかなぁ…?
嫌われたという考えに至って、また悲しくなって泣いてしまう。
迷惑をかけた自覚はあるだけに、
「でも別れたくないよぉ…っ」
泣きながらも、慌てて目を拭う。
「ダメだ。泣きやまないと」
こうやって直ぐに泣くし、頭よくないし、役立たずだから嫌なんだ。
だから九条さんは嫌になって別れようって思ったのかも。
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