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打てる様に中瀬が狙って打ってくれるので、外崎は普通にラケットを振ればいいだけだ。 そして、ラリーの最後はコートの隅へと中瀬の速い球がバシッと決まった。 「外崎さん、上手です!」 「中瀬くんが打たせてくれただけだよ」 ふたりでエヘエヘと手を合わせていれば、コーチの厳しい檄が飛んだ。 「おいっ、祐羽!次はお前だ!鍛えてやる!!」 「はいっ!」 アワアワし、慌ててコートに入った祐羽はさっそくラケットを構えた。 「おらっ!」 「ていっ!!」 飛んで来たゆるゆるボールにラケットを振った祐羽。 当たったはいいもののボールは方向音痴な本人を反映したのか、とんでもない方向へと飛んでいった。 そして隣のコートに居た男のひとりに見事当たってしまう。 「「「あっ!!!」」」 それを目にした祐羽、中瀬、外崎の声が重なり合った。 ◇◇◇◇◇ その頃、九条達は仕事の関係で馴染みの店へと来ていた。 「は~面倒くさいのぉ。俺は週末、仕事せん主義なのに」 紫藤が何度目かの愚痴を溢した。 「この前、海に行った時は楽しかった…。それから仕事仕事、仕事でつまらん。夏休みなんじゃけぇ、まだまだ遊びたい」 四十に近い男がグチグチと駄々を捏ねる様子に、眞山が飽きれシラーっとした視線を向けた。 九条はといえば、昔から慣れているのでスルーだ。 とはいえ、紫藤の意見には同意している。 九条も会社は基本的に土日祝は休みにしている。 組の方もシフト制とはいえ完全週休二日制という、ヤクザなお仕事にしてはホワイトなのだ。 できるなら今日は祐羽とのんびり家で過ごしたかったが、それが許されるほど裏の社会は甘くなく…。 「お~お前達、待たせたな」 見知った顔である篁が顔を覗かせた。 九条はこっそりと溜め息をひとつ溢した。

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