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【第三部】恋人初心者
真夏と呼んだ季節が少しずつ鳴りを潜めつつある週末の夜。
新宿から比較的近く富裕層が住む日本一の高級住宅街にある琥珀地区にある高級タワーマンション。
そのリビングでは、ソファで瞼が閉じそうになるのを懸命に堪えて家主を待つ忠犬が居た。
お世話係の中瀬がもう寝たらどうだと勧めても、あと少しと頑張っている。
大きくカクッとなってハッと顔を上げると同時に玄関で気配を感じ、祐羽の眠気は飛んでいった。
「九条さんだ!!」
そうすれば見事的中ドアの開く音がして、忠犬よろしく主人-恋人を待っていた祐羽はソファからピョンと降りると、タタタッと玄関まで走って行く。
リビングのドアを抜ければ廊下の先に待っていた人物を認めて加速した。
「九条さん、おかえりなさい!!」
そのまま走って行けば大好きな恋人が腕を軽く広げてくれたので、祐羽は笑顔で飛び付いた。
逞しい胸に飛びつけば大好きな恋人・九条がしっかりと抱きとめてくれる。
体格差があるせいか、こうして突進したところで余裕で祐羽は抱き上げられ、お互いの顔が近くで向き合う形になる。
九条と近くで目を合わせるのは未だに照れるが、嬉しさが上回る。
「起きてたのか」
「はい!今日は九条さんに絶対おかえりなさいしたかったので」
最近忙しい九条の帰りは夜中を回る事がしばしばで、下手をすればお泊まり自体が無くなる日も増えていた。
先週が正にそれで、今日は帰って来るから泊まりに来いと言われれば、眠っている場合ではない。
お子さま体質で早寝の祐羽にしてみれば、相当頑張っていた。
つきあって約三ヶ月程が経つ。
心を許しまくった祐羽は九条が大好きな事を全身で表し伝え、九条もまた言葉や表情でおおっぴらに出す事はないにしても、やはり十分に愛情を向けてくれていた。
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