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ここ最近、本当に時間無かったもん…。
テレビを観るともなしに視線を向け、夏休み後半から今日までを振り返れば、本当に九条との時間は少なかった。
九条とは年齢差が大きく環境が異なり過ぎている為、すれ違うことが多くなるのは仕方ないといえた。
せめて同じ学校に通っていたり、一緒に住んでいたら、ここまで会えない事もなかっただろう。
「同じ学校かぁ…九条さんが先生?それとも先輩とかだったり?だったら良かったのに…。ん、それってなんだか楽しそう」
無表情で学生服に身を包む学生姿の九条を想像して、くふふっと笑う。
クッションを胸にソファへゴロンと寝転ぶと、目を閉じて想像を膨らませていく。
九条が先輩だとしたら、自分とどう知り合うのか?
同じ部活で先輩後輩か、それとも不良に絡まれている所を偶然助けて貰うとか…これは漫画の読みすぎだろう。
次から次へと妄想が広がっていって、そのうち先輩九条とバスケットで相棒になり、全国制覇へと駆け上がっていくのだ。
そんな嬉しい妄想は次第に夢へと移行していき、祐羽はふわぁ~と呑気なあくびをひとつ。
そうして、心地よい気分で意識を手放していった。
しかし暫くして何だか違和感を感じると、眠い目をなんとか開くがまた閉じるを繰り返す。
そして(あれ?)と思っているうちに、祐羽はベッドへと下ろされていた。
「ん…僕…」
「いい。そのまま寝てろ」
なんとか起きようとする自分に、九条が寝ればいいと言ってくれる。
いつの間に風呂から上がったのだろうか。
バスローブ姿の九条は外国人俳優顔負けで、祐羽は(カッコいい…)と夢心地で見つめた。
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