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誰にも見られていないとはいえ、ツッコミ不在の居たたまれなさは何とも言えない。 祐羽は気分を変える為、敢えて何事もなかったかの様に振る舞う事にした。 「あとは九条さんを起こしに行って、準備している間にパンを焼いたらバッチリだ」 思いの外スムーズに運びご機嫌になった祐羽は、庶民の味方である実家近くのスーパーのテーマソングを歌いながらキッチンパントリーへ足を運ぶ。 ここには好物のお菓子から料理に使う食材が色々と保管してあって、祐羽からすればある意味お宝部屋といった感じだ。 「今日のお買い物何にしよ~お肉にお魚、なんでもあるよ~♪」 歌いながら棚を物色するが、肝心のパンが見当たらない。 「あれ?パン、いつもここに置いて…あ!!」 買ったパンは九条と食べ、残りは九条が居ない時に中瀬と食べきった事を思い出した。 「そうだった。食べちゃったんだ」 あれは確か食パン専門店で購入したものだ。 その店の中でも人気ナンバーワンである『雲のようなパン』という物で、ペロリと食べてしまった記憶のある恐ろしいパンであった。 「また食べたいなぁ…」 思い出したら無性に食べたくなってきた祐羽は、パントリーから出ると時間を確認した。 朝早いとはいえ、その食パン専門店はパン屋らしく早朝から開店している。 「よし。今から買って帰って来たら九条さんが起きて来るのに間に合うよね」 たいてい祐羽より早く起きている九条だが、お疲れで翌日が休みの日は、九時過ぎまで寝ていたりする。 夜セックスして翌日、祐羽が眠っていれば一緒に昼までゴロゴロする時もあった。 今日はお疲れでお休みなので、ゆっくりと起きて来るはずだ。 先に作っておいた料理を冷蔵庫に入れると、自分の部屋へと向かう。 「お財布、お財布」 財布を鞄に入れた祐羽は九条を起こさない様に静かに玄関へと向かった。 「それじゃぁ行って来ます」 小さな声でそう残すと玄関ドアを開けた。

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