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エレベーターで降りた祐羽はフロントのコンシェルジュに挨拶をすると、エントランスを抜ける。 そして顔見知りの警備員に会うと「おはようございます」と元気に挨拶をした。 「おはようございます。お出かけですか?気をつけて」 「ありがとうございます。いってきます」 そうして見送られた祐羽はマイペースにテクテクとマンションの敷地を抜けると、道路へと出た。 いつもは車で地下からの出入りが主なだけに、表から出て行くことはほぼ無い。 早朝の為、組員は居ないと思い込んでいる祐羽だが、交代で二十四時間年中無休で誰かしらは待機している。 そんな事は知らない祐羽は、幻の『雲のようなパン』を求めて意気揚々と、ひとり店へと向かった。 「えーっと、お店どっちの方だっけ?」 マンション近くのパン屋なら九条と行った事があるので知っているが、今から目指す店の場所は実は曖昧だった。 あれはマンションへ向かう途中、車で連れて行って貰った場所だった為、正直いうと祐羽の記憶は所々しかない。 「あの時は確か…うーんと…。えーっと…あっ、こっちだ!」 脳内で記憶を引き出して地図をクルクル回した祐羽はピーンッと閃いた。 そうして自信満々で歩き出したが、脳内の地図を何十回も回した時点でもう間違っている事に気がつかない。 間違いをこれっぽっちも疑っていない祐羽は、少し速度を上げて歩きながら地よい朝の空気を吸い込んだ。 「ふぅ。涼しくて気持ちいい」 まだまだ昼は暑い日が続くが、蝉の鳴き声も殆ど聴くことも無くなり、朝夕の涼しさを感じて少しずつ秋が近づいている事を知る。 「もう秋かぁ…早いなぁ」 季節の移り変わりを実感した祐羽は、九条と出会った頃をふと思い出した。

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