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祐羽は知らないだろうが、学校の行き帰りだけでなく普段も中瀬達のうち誰かしらが一定の距離を保って密かに警護している。
そしてプライベートは完全に九条が側に居るので、大丈夫だと思っていたのだが。
(アイツらから連絡が無いということは、表から1人で出たな)
いつも出入りは必ず裏口からで、移動には車を使う様に徹底させていた。
移動の際には乗り降り連絡を組員から寄越す様にしていたのだが、今回は無い。
「バカ犬め」
九条は祐羽を探すため急いで家を出ると、エレベーターで階下に向かう。
最中に待機している組員へ連絡を入れるが、やはり祐羽は見ていないとのこと。
探すように指示を出したと同時にエレベーターが一階へと着いた。
「おはようございます」とコンシェルジュから声を掛けられる。
「あぁ。ところでウチのところのチビを見かけなかったか?」
コンシェルジュの女は笑顔で応えた。
「はい。月ヶ瀬様でしたら丁寧にご挨拶してくださって。確か…一時間前くらいでしたか、楽しそうな様子で出掛けられました」
「そうか。助かった」
「お役に立てて良かったです。行ってらっしゃいませ」
情報を得た九条は、頭を下げ見送るコンシェルジュを背にして先を急いだ。
別に祐羽がトラブルに遭ったわけではないし、時間が経てば帰って来るのは分かっている。
分かってはいるが、一緒に過ごした翌日に居るはずの恋人が居ないというのは落ち着かない。
それは夏のあの事件が大きく九条の中にも、僅かながらも陰を落としている証拠だった。
(俺も人の子だった様だ)
祐羽と出会って以来、自分らしくない言動が増えた事に気がつき、それが可笑しくて小さく笑った。
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