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壇上に上がったのは三十代くらいだろう、学校の中では若い方の男性教師だ。 「今日からフリーとしてお世話になる浅尾といいます。宜しくお願いします」 優しそうな雰囲気の数少ない若い教師に女子生徒が少し色めき立つ。 「やばーい。私の好きな顔なんですけどぉ」「今度の先生、けっこういい感じじゃない?」と新任教師にキャッキャッ言って騒がしくなり「はい。静かに」と各々担任から声を掛けられる始末。 イケメンで祐羽が思い出したのはもちろん九条で、もしもこの場に先生として来たらと想像すると嬉しいけれど、きっと不安にもなっただろう。 (絶対に大人気になっちゃうもんね。女の子にキャーキャー言われるんだ、きっと) 脳内には女子生徒に囲まれてモテモテな九条が思い浮かんで、祐羽はそれを打ち消した。 (やっぱり九条さんが学校の先生じゃなくて良かったかも) そんな風に葛藤している間に壇上では新任挨拶は終わり、生徒会長の交代が行われていた。 新会長には校内でも勉強が出来る方で、日本の頭脳と呼ばれる帝都大学入学は余裕と噂される砂糖《さとう》が立った。 頭もいいがスポーツも得意、おまけに結構イケメンなので、学校始まって以来のパーフェクト会長などと言われている。 ここでもまた女子生徒のキャッキャッという声が響いた。 ついでにいうと、新副会長は彼の親友で名前を塩見という。 なので『砂糖と塩コンビ』と学校の新名物となっており、忘れっぽい祐羽の脳にもしっかりと刻まれていた。 その砂糖の口から出たのは約一ヶ月後に迫った文化祭の話だった。

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