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騒がしいはずの教室に声がスッと響いた。
声の主は決して大きな声を上げたわけではないというのに、不思議と部屋の隅に居た祐羽の耳にも入ってきた。
誰だろうと顔を向けると同時にキャーッと黄色い声が上がり、教室の入り口に給仕係の女子が一気に集まった。
それでも相手は頭ふたつ三つ分くらいは高いので誰かは確認出来た。
それは、先日の全校集会で紹介された新任のフリーの教師・浅尾だった。
「ねぇねぇ浅尾先生、これ見て!!」と女子に腕を引かれ少し困った様子で笑っている。
周囲も「先生、後で俺らのとこにも来てよ!」と声が上がり、それに浅尾が「オッケー、後で行くよ」と爽やかに笑っていた。
本当に優しそうな笑顔と雰囲気に、引っ込み思案なジュース係メンバーも「私たちの所にも来てもらう?」なんてキャッキャと珍しくはしゃいだりした。
来てくれるかどうかワクワクする暇など今の祐羽には無い。
とにかく祐羽はみんなに役立たずと思われたくなくて、目の前の段ボールを何とかやっつける事に集中する。
あまり力を入れ過ぎて一気に変なところまで切ってしまうと大変だからと慎重になっていると、今度はなかなか進まず。
とうとう「代わろうか?」と女子に言われてしまった。
自分でやりたい、けれど迷惑を掛けたくない。
そんな思いでカッターを渡そうとした時だった。
「苦戦してるね」
背後に立って居たのは浅尾で、直ぐに祐羽の隣に座り込むと「貸して?」と手を出した。
「あ、はい」
「この線を切ればいいんだよね?」
「おっ、お願いします」
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