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「ハハッ、大袈裟」
喜びにウルッとしながら抱きついてきた祐羽の頭を撫でる。
「あっ、でも九条さんが来てくれるってなっても、中瀬さん達も来てくださいね」
「じゃぁ行く!お前のところの学祭どんなのか楽しみ。俺の高校は学祭とか体育祭に命かけてたからな!!」
中瀬がドヤ顔を見せる。
「命…」
どれだけ凄かったのだろうか。
家までの道中、中瀬の高校の学園祭についての思い出話に耳を傾けた祐羽だった。
◇◇◇◇◇
学園祭に向けての準備は順調で、祐羽達のグループは業務スーパーを巡ってジュースの仕入れ先を決めたり、カップ等の買い出しへ出掛けたり楽しんでいた。
メニュー表作りは河村がパソコンで可愛く仕上げてくれたが、教室前に分かりやすく大きな看板を作ろうとなって、手の空いているジュース係は早速作業を始めた。
「じゃぁ、ここ以外は要らないから切っちゃうね」
大きめの段ボールを確保し不要な部分を切り落とす事になり、今のところ活躍していない祐羽は、ここは自分が!とカッターを手にしたものの。
(うっ、思ったよりも硬くて切れない)
もっとスムーズにいくものだと思っていただけに、予想外の事に焦ってしまう。
女子は買い物だ何だと率先してくれているし、もうひとりの男子も値段の計算など会計を請け負ってくれていた。
その中で自分だけが何もしていない。
やったと言えば買い物に着いて行ってお店にワクワクしていただけだ。
これはまずいぞ、と思い看板作りのこの作業を受けたのはいいが、これではまた役立たずになりそうだ。
「大丈夫?」
「う、うん」
女子の声に焦りつつ、漸くカッターで数センチ進んだところだった。
「何か手伝う事があるかな?」
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