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「むーむー!!(助けろ)」と呻く凛太郎の意図を全く理解出来ず首を傾げる祐羽に、湊が「大丈夫、大丈夫。俺が居るから」と安心させる様に笑顔でドアへと誘導してくる。 「じゃっ。このまま素直に戻れよ?寄り道とかすんなよ。学校で方向音痴とかマジでやめろよ?」 「えっ、僕、方向音痴ですけど、学校ではさすがに迷いません」 「なら、よし。行け!」 言われた通り湊がドアを開けると、廊下の人の波も落ち着いており無事に出る事が出来た。 丁度そこに湊の着信が入ったらしくスマホを取り出すと「あっ、俺です。すみません出られなくて」と話始めた。 それを見て邪魔をしてはダメだと判断した祐羽は、最後にペコリと頭を下げ「急げ急げ~!!」とちょこまかと人波を掻き分けて外崎と中瀬の待つ場所へ戻って行くのだった。 そんな慌てて去っていく祐羽を見送りながら「犬、だな」と思わず呟いた湊は相手に「いや、独り言」と小さく笑い申し訳ないと謝った。 それから「今ちょうど別れたところで―」と祐羽の去った方へ視線を送るのだった。 「あっ、そうだ」 暫く進んだところで時間も結構経ってしまい心配と迷惑を掛けていることに気がついた祐羽は、ふたりに連絡を入れておこうとスマホを開いた。

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