「今の渋谷先輩だった？何で一緒に居るんだろう…。いや、それより僕は一刻も早く戻らなくちゃ」 祐羽は（近道、近道）と人の少ない階段を下りて行くことにする。 踏み外さない様に注意しながら急いで下りていると、踊り場の窓から気持ちのいい風が入ってきて祐羽の髪を撫でた。 気持ちいいなと思った瞬間、擦れ違った人と肩がぶつかってしまった。 「あっ、ごめんなさい」 「いえ、すみません」 そう返した祐羽はペコリと頭を下げて相手が階段を上っていくのを見送ると、何気なく視線を窓の外へと向けると木々の隙間から校舎裏が見える。 「あっ！浅尾先生だ」 遠目ではっきりと見えないが、あの服装とシルエットは間違いなく浅尾だ。 そのまま人気の無い方へと歩いて行った浅尾は、周囲を確認し誰も居ないのを確認すると錆びた扉を開けて中へと入る。 そこは倉庫として利用している旧校舎で、普段使用しない第二裏門へと繋がる。 （何しに行くんだろう？） まだ文化祭の最中で先生という立場なのに一体なぜ旧校舎へ行くのか。 倉庫として使っているが、普段必要ない物ばかり置いてあると聞いている。 （怪しい…） 祐羽の探偵アンテナがピピッと反応した。 ターゲットの後を追え――と。