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「あの、九条さん」 そんな九条に呼び掛ければ何だと視線が落とされた。 「先生の弟さんに僕、感謝してます」 九条が目を半分に細め、同意しかねると表情をしかめた。 「九条さんは忙しい中で大変だと思うんですけど、普段会えない学校でちょこっとでも会えたので」 そこまで言って照れる祐羽に、九条が「そうか」と返す。 「はい」 そうニコリと笑顔で頷いき見上げた祐羽の唇に九条の唇がソッと落とされた。 一瞬のキスではあったものの威力は十分で、祐羽は顔を真っ赤に染めた。 じっと見つめられ益々顔を紅潮させる祐羽は、視線を落とした。 「眞山」 「はい」 祐羽から視線を外した九条が声を掛けると眞山が顔を引き締めた。 そうして腕にくっついていた浅尾兄を引き剥がす。 「あっ」と離された手を伸ばそうとする兄を大空が制止する。 「兄ちゃんはコッチ!」 腕を引っ張られた広海が弟を軽く睨む。 生徒には見せない顔で、プンッと不貞腐れた。 そんなやり取りは眞山の体に隠されていた祐羽には全く見えず。 「祐羽、降りろ。俺はまだ仕事だ」 「…はい」 幸せ気分は短く、しょんぼり車を降りる。 「お仕事、頑張ってくださいね。気をつけて」 「夜は早く帰るようにする。家で待ってろ」

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