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「中瀬くん、知り合い?」 そこへ外崎が割って入り中瀬に紹介を促すと、浅尾が口を開いた。 「あっ!外崎さん?ですよね?」 「はい、そうですが。前にお会いしたことが…?」 コテンとあざとく首を傾げる外崎に、浅尾は、あー…と言いながら二度ほど頷くと「学びたい、そのあざとさと、儚さよ」と呟いた。 「えっ?」 「いえいえ、なんでも」 浅尾は笑顔を浮かべ、両手を胸の前でブンブン振った。 「学校で教師をしています、浅、尾、といいます。中瀬とは眞山さんの直属の―そっち方面の関係で、外崎さんの事も一方的ではありますが、顔とお名前は知ってました」 その説明で外崎は(あぁ、そうなんだ)と納得して頷いた。 三人を眺めつつ「食うか?」と食べかけのイカ焼きを差出してきた渋谷に、蚊帳の外だった祐羽は「ありがとうございます!」と礼を言い遠慮なく食いついた。 噛む力が弱い祐羽が噛みきれずイカ焼きと格闘している間にも、中瀬と浅尾の話は進む。 「そういえば、さっき裏で眞山さんに会ったよ」 「えっ?眞山さん!?」 眞山の名前を出されて中瀬が目を輝かせて浅尾の指差した方を見る。 こんなに近くにいたというのに眞山に会えなかったなんてと、心底残念に思いながら(会いたかった)と中瀬の表情は曇る。

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