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午後のひととき
祐羽がのんびり始めると、両親もゆったりとした様子になる。
リビングのテレビでは、日曜日の午後という時間な為、いつもとは違った番組編成として流れていた。
「体調も良さそうね。もう安心ね~」
香織にそう言われて祐羽は苦笑いを浮かべた。
「え、あー…うん。もう本当に大丈夫だよ」
本当のところ、蹴り飛ばされた脇腹はまだ少しズキズキと痛む。
我慢は出来るけれど、全く痛くないかと訊かれれば首を横に振ってしまう。
けれど、あの打ち身を見られれば心配されることは百も承知なので、絶対に言うつもりは無かった。
原因を言うことは、もっと憚られた。
「なら良かった。ほら、お菓子よかったら食べなさい」
亮介がテーブルに出された菓子を示した。
「うん!ありがとう。わ~い‼」
病院を退院したのが昼前だった為、昼食はとっていなかった。
第一に胸がいっぱいで、朝食さえなんとか掻き込んだ状態だったのだ。
昼食は特に必要とは思わなかったが、自宅で両親に挟まれて安堵した途端に、やはり小腹が空いてきた。
祐羽は嬉々として、好きな菓子を手にして頬張り始めた。
「でも心配したのよ、ゆうちゃんの携帯に何度も掛けたけど出ないんだもん」
菓子を黙々と口へと運んでいると、香織がため息混じりにそう言った。
「ゆうちゃんの先輩から電話貰ったから良かったものの…。探しに出掛けようかと思ってたのよ」
「まさか体調崩してたなんてな」
亮介もそう言いながら、隣でウンウンと頷いていた。
そこまで心配してくれていたなんて、と喜ぶと同時に絶対に昨夜の出来事は話せないと改めて思った。
「心配かけてごめんなさい…」
しょんぼりとした顔の祐羽に、両親も優しく笑いかける。
「仕方ないわよ。次からは少しでも体調良くなかったら早目に電話入れるのよ?」
「そうだぞ。倒れてからじゃ遅いからな。本当は直ぐに迎えに行こうと思ったんだが、お前の先輩が説明だけして『もう大丈夫なんで、寝てるしこのまま』って言って直ぐに電話切ってな…」
亮介は若干不満そうに口をへの字にした。
「だから、今度からは分かったな?直ぐに電話するんだぞ ‼」
「うん、分かった…。今度からはそうする」
両親に諭されて、祐羽はしんなりと頷いた。
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