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興味

促されて眞山は言葉を続ける。 仕えている男が部下を叱責するのに、蹴りを入れた瞬間に飛び込んできた少年。 名前は確か、月ヶ瀬祐羽だったか…。 気を失ってしまったので、仕方なく知人の居る病院へ運び込んだ。 特別何もなく無事に退院したと、病院と後に残した中瀬から連絡は貰ったが…。 「中瀬を残して帰ったのですが。特には聞いておりません」 九条と祐羽の接触は僅かしかない。 それなのに、何処にそれだけ気になる要素があったというのか? 一般人の祐羽を気にかけて得になるような事は一切ない。 九条にしては珍しい事だ。 「直ぐに確認してみます」 眞山が携帯を取り出すと、九条が「いや、いい」と連絡は必要ないと言う。 そのまま九条はいつものように、取り出した書類に目を通し始めた。 眞山は後で祐羽の様子を調べておこうと、頭の隅にメモした。 「社長。これから松浪商事との懇談と、18時から鏑木会長との食事会の予定が入っております」 時間を確認して眞山が伝えると、九条は小さく溜め息をついた。 どこか疲れたような、悩んでいるような…こんな表情を仕事中に見せるのは初めてだった。 眞山は、九条が会社を興した時から一緒に仕事をしてきた。 もちろん裏の家業は知っている。 眞山の実家もヤクザという仕事なので、そこからのツテで就職した様なものだ。 九条の男前な姿と経営者としての実力。 そして、圧倒的なカリスマ性というか屈服させられる絶対的な力の差。 それを感じ、眞山は一度離れていたヤクザの実家へ戻り、憧れて九条の秘書をしていた。 その頃から十年は経つが、一度も仕事中にこんな表情は見たことがなかったので心底驚いた。 「社長…体調が?」 「いや、大丈夫だ」 思わず伺ってしまうほどに、心ここに在らずな九条に、眞山は心配になるのだった。 降り立った駅は昨日と同様に、普段来ることのない街だった。 祐羽は携帯を受け取るために、待ち合わせに向かった。 まだ約束の時間まで余裕がある。 「あと、一時間半か…。ちょっと見て回ろうっかな」 祐羽は携帯を返してもらえる安心感と、来る事の無い街に心高まらせて店を見て回る事にした。 財布が心もと無いので、冷やかしになってしまうが。 ひとりで買い物に来ることの無い祐羽は、自分が少し大人になった気持ちになっていた。 「あ。ここ入ってみよう」 祐羽はウキウキしながら、目に入った店へ足を向けた。

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