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契約書

大きな武骨な男の手が、祐羽の小さな手を握ると同時にサワサワとゆったり撫で回す。 少しかさついたその手の平から逃れようと動かすが、それは許されなかった。 「さぁさぁ、とっとと書いちゃおうね~♪」 鼻歌でも飛び出しそうな口調で言うと、森田はグッと力を入れた。 「ここと~ここに名前書いてね」 「あっ、えっと、まだ読んでいないです…」 契約内容を読んでいないと訴えようとするが、聞いてもらえない。 それどころか、強引にサイン欄にペン先を持っていかれる。 心と体は抵抗しても、力の差からそれは無理というものだった。 「やっ、イヤだ…‼」 「うるせぇ‼グダグダ抜かすんじゃねぇ‼ ここに名前書けば終わりなんだよ‼」 男の声が一気に荒らげられ、そのドスの効いた声はどう考えても一般人には思えない。 祐羽の予感は的中したのだ。 「ここにサインしねぇと、お前の事を裸にひん剥いてネットに上げるぞ‼ それから家族がどうなってもいいんだろうな?」 耳元で囁かれる。 祐羽は思いもよらない脅しに、目を見開いて森田を見た。 森田はその顔を見てニヤリと質の悪い笑みを浮かべる。 祐羽がサインをする事を確証したからだ。 カタカタと小さく震えながら目に涙が溜まっていく祐羽の表情は何故かそそられる。 男に一切興味の無い森田だが、何故か祐羽に性的な意味で絡むのを止められない。 まだ幼い見た目で、華奢な体と変声期を迎えていないのか、そのボーイソプラノ。 こうして涙に潤む目もいけないのかもしれない。 握りこんだ小さな手。 森田の手の平は、少し汗ばんでいた。 サインを書かせるという名目で、体を覆いながら祐羽の髪に顔を近づけて少し息を吸い込む。 シャンプーの香りだろうか。 いい匂いに益々興奮してくる。 森田は早くこの理不尽な契約書にサインをさせようと手の平に力を込めたのだった。

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