12 / 337
act.2 Cherry Kiss 〜the 1st day ※
そんな訳で、休憩時間。俺はアスカに興味津々。訊きたいことがいっぱいある。
「ねえ。アスカ、エッチしたことある?」
隣に座るアスカが斜め下から俺をじっと見つめる。うわあ……アスカの流し目、殺傷力絶大。
「……もしかして、誘ってる?」
ま、まままままさか!
「いや、あの、ちょっと聞いてみかっただけ!」
どぎまぎする俺。心配しないで! 俺、女の子にしか興味ないから! その割には心臓バクバクだけど……!
そんな俺を楽しそうな顔で見つめながら、アスカが答えてくれる。
「あるよ」
ああ、そりゃあるよな、これだけキレイなんだもん。すっごいエロそうだし。いや、エロいのはあくまでも俺のイメージ。実際アスカはこの家に来てから全然エロいことをしてない。当たり前なんだけど。
「レンは、どうなの?」
アスカのキレイな眼差しに、俺はちょっと恥ずかしくて俯く。
「ないよ」
「ふうん、そんなにカッコいいのにね」
え? 何て? 今のもっかい言って、嬉しいから!
「レン、学校でモテるでしょ。女の子、ほっとかないんじゃないの?」
「そんなことないよ」
実はそんなこと、ないこともない。何人かの女の子と付き合ったこともある。でもどうしようもなくエッチしたいと思うのに、いざ女の子を前にすると押しが弱くてそこまで持ち込めない。
「別に焦ることないよ。初めては本当に好きな人との方がいい」
そう言うアスカは、なぜかちょっと淋しそうだった。
アスカの初めては、本当に好きな人とだったのかな。
珍しく父さんが仕事から早く帰ってきて、父さんとアスカと俺、三人でちょっとぎこちなく食卓を囲む。
「アスカさんの料理はおいしいですね」
アスカの作ってくれた料理は普通の家庭料理なんだけど、サラダとかカツレツとか、オシャレな盛り付け方で見た目がすごくキレイ。なんだか父さんもご満悦だ。確かに味も文句なくおいしい。
どうでもいいけど、アスカって名前? それとも、名字がアスカ?
「廉の勉強の方はどうですか?」
父さんの質問に、アスカがにっこりと微笑みながら答える。
「とっても頑張ってますよ」
ウソウソ。エッチな話とかしちゃってたし。
父さんが俺を探るように見てることに気づく。嫌な予感がした。
「ところで、紹介したい人がいるんだ」
ほら、きた。途端に気分が沈んでいく。
「明日の夜、会社の近くまで来てくれないか」
「無理だ。明日もあさっても、ずっと無理」
俺は突っぱねる。我ながらガキっぽい言い方だった。でも、実際無理なんだから仕方ない。
気まずい空気になった。アスカがちょっと困ったように俺を見るから、目を伏せて――ふと思いついたことを口にする。
「……じゃあ、アスカと一緒なら行く」
「やめなさい」
父さんが険しい顔をして俺を咎めてきた。
「アスカさんには関係ない」
「関係あるよ。父さんや父さんの女と会うのに、俺は一人かよ。そんなの不公平じゃないか」
俺が『父さんの女』と口にした瞬間、アスカがハッとする顔が視界の隅に映った。
「アスカとじゃなきゃ、行かない」
父さんが困ったようにアスカを見る。
「僕は構いません」
アスカが口を開く。その顔は涼やかで、微笑みは優しかった。
「ただ、僕が行けば浅井さんがお困りになるでしょう」
「いえ、私は……」
父さんが俺をチラリと見るけど、引きさがるつもりはなかった。
「息子の我儘に付き合わせて申し訳ありません。お願いできますか」
「仕事ですので。お気になさらずに」
大人の受け答えをして、アスカは俺に向かって柔らかく微笑んだ。
そんな訳で俺は、アスカと一緒に父さんの女と会うことになった。
お風呂に入って、そのまま一目散に自分の部屋にこもる。ものすごく気持ちがモヤモヤしてた。
よし、エッチな動画でも見ながら抜くか! 俺って、超健全。
思い立つと同時にノートパソコンを立ち上げてお気に入りの動画を出そうとしたその時、コンコンと部屋のドアを叩く音が聞こえて、慌ててパソコンの画面を倒す。
「ハイ!」
焦り過ぎて返事がデカくなってるし! 超不自然。
「入るね」
「な、何?」
扉を開けて入ってきたアスカに、俺は完全に動揺しちゃってる。だってお風呂上がりのアスカは頬がほんのり色づいてて、エロさ倍増だ。
殺人的な色気を大放出しながら、俺の先生は桜色の唇を開いた。
「一緒に寝よう……」
ムリ、ムリムリムリ! 寝るって何、どっちの意味? どっちも無理!
「ダ、ダメ」
やっとのことで声を絞り出す俺に向かってアスカが歩み寄ってくる。
「一緒のベッドに入るだけだよ。お願い」
かわいくお願いされても無理だってば。
「アスカの部屋、ちゃんとあるだろ」
「僕、一人で寝られないんだ」
子どもみたいなことを言いながらアスカは立ち止まって、テーブルのノートパソコンに視線を留める。
ジーッと部屋に響く、気まずい小さな機械音。
「……ああ、邪魔しちゃったね」
気づかれた! さすが男同士、よくわかってる。
俺はコクコクと頷く。そうだよ、アスカがいたら俺、処理できないでしょ。空気読んで、ね?
そういうわけで、アスカはそのまま部屋を出て……行かなかった。魅惑の微笑みを浮かべながら、ゆっくりと俺に近づいてくる。ジリジリと後ずさるうちに、背中が壁にあたってしまう。
鼻先スレスレの距離で、アスカが俺を見上げる。顔、超近い。
ああ、アスカ。俺よりちょっとだけ背が低いんだね。睫毛、長い。顔、すごくキレイ。お人形さんみたい。キラキラした瞳に俺が映ってる。
「……してあげようか?」
17歳にして、俺は初めて知る。悩殺って、ホントにできるんだってこと。
やっぱり。やっぱり、アスカはエロかった。
――ああ、なんでこうなっちゃったんだろう。
下半身剥き出しでベッドに腰掛ける俺。もう、超ギンギン。
「心配しないで。料金に含まれてるから」
正面にひざまずくアスカが、俺の股間をじっと見つめながら冗談を言う。恥ずかしい。マジで泣きそう。
「あんまり、見ないで」
俺の言葉にアスカが微笑む。その顔、超キレイ。超エロい。
「アスカ、早く、して……」
俺の分身、触ってほしくて小刻みに震えてる。
「レンのここ、もう泣いてる……」
指先が俺の先走りに触れた途端、背筋をビリビリと電流が駆け上がった。そのまま器用そうな手で俺のものを握り込んで扱いていく。
「……あ、アスカ……ッ」
上擦った変な声が出た。何だこれ。もう腰が砕けそう。自分でするのと全然違う。アスカの手、早く動かしてるわけじゃないのに、すごく気持ちいい。腰がガクガクする。
ああ、もうイキそう。俺、早過ぎる。カッコ悪い。でも。
「アスカ、ダメ、ティッシュ……」
もう、単語でしか喋れない。
次の瞬間、アスカは大きく口を開けたかと思うと、俺のものを喉奥まで咥え込んだ。ぬめるような感覚。包み込むその熱。強烈な快感。
「……は……ッ、あぁ……ッ!」
秒殺で、果てた。
咥えられたまま何度か収縮して全部を出し切った後、こくりと喉を鳴らしてアスカが俺の放った欲を飲み干した。
信じられない。何もかも、信じられなかった。
「アスカ……」
「気持ちよかった?」
気持ちいいなんてもんじゃなかった。アスカの濡れた唇が、もうどうしようもなくいやらしくて。
堪らずにキスをすれば、びっくりしたようにアスカが目を見開いた。
アスカの唇、すごく柔らかい。気持ちいい。ドキドキが止まらない。
なんだ、これ。唇を離しながら、俺はそのドキドキを言葉にする。
「アスカ……好きだ」
俺は、アスカに恋をした。
ともだちにシェアしよう!