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act.5 Caged Kiss 〜 the 4th day 10 ※
唾液にまみれた指が、後孔にそっと触れる。雄理の上に跨がったままその胸にべったりと頬をつけると、心臓の音が伝わってきた。すごく速くて、大きな鼓動だ。
円を描くように後孔の周りを優しく撫でられて、思わず吐息が漏れる。焦れるような感覚に中が疼いて、鳥肌が立ってきた。
「あ、ぁ……」
勝手に腰が動いてしまう。探るように指が入ってきて、待ち望んだ刺激に身体が震える。
「ん、っあ……ッ」
まだ、指一本が入っただけ。なのにもうイきそうになってることに自分でもびっくりする。身体の中がすごく熱くて、下を見ると萎えたはずのものがまた勃ち上がってた。
指がゆっくりと出し挿れされると、ローションを使ってないせいか、指の節くれ立った感じがダイレクトに伝わってくる。
「……ふっ、あッ、あぁ!」
ぐるりと中を掻き混ぜられて、前立腺を掠める。強過ぎる快感を雄理の胸に頭を押しつけて堪える。中で指が動く度に、無意識に腰がガクガクと揺れてしまう。
「あ、そこ、ダメッ、ああ……ッ」
探り当てられた場所を強く擦られて悲鳴みたいな声が出た。ダメだって言ってるのに全然やめてもらえなくて、そこをグリグリと刺激される。身体が強張って、頭が真っ白になっていく。
「や、ぁッ、イく……ッ」
後孔が意志とは関係なく収縮して、その震えが全身に広がった。一人じゃ受け止めきれないぐらいの強い快楽に襲われて、必死に雄理にしがみつく。
激しい波が少しずつ引く中で、俺は恐る恐る目を開いた。
──なんでこんなにすぐイっちゃうんだろう。
雄理の顔がちゃんと見られなくて俯けば、きれいに鍛えられた腹に白濁が飛び散ってた。
後ろだけじゃなくて前でもイってたんだ。全然触られてないのに。
呼吸が苦しくて、恥ずかしくて、まだ快感が尾を引いてて。もうわけがわからなかった。勝手に涙が滲んでくる。
「ごめん……」
「謝るな。お前が気持ちいい方が嬉しいから。それに」
雄理が両手で俺の脇腹を抱えて、そのまま上体を起こしてくれた。
「すごく、かわいい」
ちょっと目線を逸らしながらそんなことを言うから、びっくりして涙が引っ込んでしまう。
嬉しくて口元が緩んだから、それを隠すために唇を重ねた。軽く舌を絡めた後で唇を離せば、後ろに押し倒される。
仰向けになって見上げれば、雄理が俺がさっき出した白濁を指で拭ってるのが見えた。
「あ、待てって……ッ」
イったばかりの後孔に指を挿れられて、上擦った声が出る。そこはもうすごく敏感になってて、意志とは関係なくずっとヒクついてヤバかった。
中がヌルヌルしてるのがわかる。すごく気持ちよくて何度も喘ぐ。俺の放ったものを、そこに塗り込んでるんだって気づいた。指が抜けると、喪失感で身体がまた疼く。
「陽向……挿れていいか」
早く挿れてほしかった。俺を見下ろすその顔が、すごくきれいだ。雄理が俺を見てくれてる。それだけでもう奇跡だと思った。
顔を見て、目線を落として、雄理のすごく立派なものをまじまじと見る。
指なら数え切れないぐらい挿れられたことある。バイブも仕事で使ってた。でも俺が仕事用に渡されたのは、今思えば澤井さんの思いやりだったのかもしれないけど、初心者用のごく細いものだった。
だからこんな大きさのものが入ったことないし、今更何言ってんだって感じだけど、正直怖かった。
「いいけど、ちょっとは手加減しろよ。俺、一応初めてだから」
恐る恐るそう言って視線を上げると、雄理は鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔をして俺を見てた。なんかバカにされてる気がして、慌てて言い訳する。
「仕方ないだろ、本番なしの店だったんだから」
言い訳する俺を見て、雄理がちょっと笑った。なんで笑われてるのか全然わからなくて、なんか腹が立つ。
「それは、嬉しいな」
妙に色気を含んだ笑い方に、魂を吸い取られたように見惚れてたら、両脚を割って雄理が先端を後孔にあてがってきた。
触れてるところが熱い。入口をグリグリと刺激されて、堪らずに声をあげるとゆっくりと侵入してきた。
「──っ、あ、あ……ッ」
ものすごい圧迫感。何かに縋りたくてシーツをギュッと握り締めるけど、全然頼りない。
ギチギチと中が押し広げられていく。熱くて熱くて、自分じゃどうしようもできない疼く感じが入口から奥まで伝わって、奥から全身に広がっていく。その強過ぎる感覚にただ翻弄される。
「……あ、んっ、あァッ!」
急に後孔が収縮を始めて、身体がビクビクと痙攣した。
ああ俺、イったのかも。呼吸が苦しくて、酸欠になりそうだ。
閉じていた目をうっすらと開けると、雄理が心配そうに俺を見下ろしてた。両腕を伸ばすと、優しく引き起こしてくれる。向かい合わせのまま座って下を覗き込むと、繋がってるところが見えて、ひとつになってるのを実感できた。
それが嬉しくてそのままギュッと抱きつくと、また抱き返してくれる。お互いの身体が熱くて、汗ばんですごくベタベタしてる。でも、何て言えばいいのかわからないぐらい幸せだ。
一緒にいたかったのにつらくて離れてしまったこと。勇気を出して告白しようとして撃沈したあの日のこと。いろんなことが頭の中を駆け巡って、鼻がツンと痛くなる。
デリヘルで働くことになってから、仕方なく快楽で自分をごまかしてきた。だけどこうやって好きな人とセックスすると、それってすごく虚しいことだったんだなとわかった。
「雄理……大好き……」
頬を両手で挟まれて、無理矢理顔を上げさせられる。その勢いで涙がこぼれ落ちた。
「泣くなって、バカ」
バカって言うなって咎めようとしたら優しくキスされた。その唇が頬に滑って、流れる涙を拭ってくれる。
「ずっと傍にいろよ」
泣きながら頷くと、今度はまた唇にキスされて、熱を持った舌が挿し込まれた。深い口づけを貪ってると、そのままゆっくりと腰を揺さぶられる。繋がった部分からまた熱が生まれてくる。
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