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act.6 Platinum Kiss 〜 the 1st day 1 ※

カーテンを締め切ったリビングのソファに座り込み、俺はただひたすらに時間が過ぎるのを待っていた。 午後一時。約束の時間ちょうどに、部屋に軽やかな電子音が響いた。マンションのエントランスからの呼出音だ。 画面を確かめもせずに解錠ボタンを押して、玄関の前で待つ。 やがて鳴らされたインターホンの音に扉を開ければ、目の前に人影が立っていた。 やや華奢な身体つきをした、美しい顔立ちの若い男。 整い過ぎた美貌は作り物のようだ。それでも、少年の幼さを残した頬のラインが人間らしさを醸し出している。 愁いを帯びた澄んだ眼差しは、真っ直ぐに俺を見つめる。見る者全てを魅了して世界の奥底へと引き摺り込むような、強い吸引力。 俺はアスカをまじまじと見つめて、確信する。 こいつなら、大丈夫だ。 「はじめまして、カズミさん」 淡々とした話し方だが、落ち着いた声には情感が滲んでいた。 「アスカだな。上がれよ」 アスカは脱いだ靴をきちんと揃えて上がり込み、俺の後に続いてくる。 リビングの灯りを点けて、ソファに掛けるよう促すと、アスカは俺が掛けるのを待って隣に腰を下ろす。 恐らく特注であろう大きなソファが、二人の重みの分だけ沈んだ。 「僕は何をすればいい?」 俺はローテーブルに置いてあった写真を手に取る。 「これが、お前の仕事だ」 あえて伏せていた写真をそのまま差し出せば、アスカは受け取って表に返した。 写真の中には、あの男が写っている。その視線がこちらを向いていないのは、隠し撮りをしたものだからだ。 「お前はこの男と偶然を装って知り合い、親しくなるんだ。こいつをこの部屋まで連れて来てほしい。成功すれば報酬は別に払う」 写真の男をじっと見つめていたアスカは、おもむろに顔を上げる。 「お金はいらない。四日間の料金は、PLASTIC HEAVENで払ってくれたよね。この仕事は、その料金の中に含まれてる」 間近で見ればますますきれいな顔だった。穢れのない美しい瞳が、至近距離で俺を映し出す。 「この人はどういう人?」 「余計なことは知らない方がいい」 「知っている方が、うまくやれる。あなたの期待に応えたい。だから、教えてほしい」 どういう人、か。 澄んだ瞳は射抜くようにこちらに向けられていた。ごまかしを赦さない眼差しだ。 詳しい事情など言わないつもりだった。なのに、俺は根負けして話してしまう。 「二ヶ月前に姉が死んだ。殺したのは、この男だ」 その目がわずかに見開かれて揺らいだ。 「この男のせいで、俺の姉は自殺したんだ」 呪詛のような言葉は、空気に触れた途端に一瞬で燃え上がり消えていく。 焦げついた長い沈黙が続いた。アスカは言葉の意味を噛み締めるようにしばらく目を閉じていた。微かに苦悩の表情が浮かぶ。 やがて長い睫毛が震えて、ゆっくりと瞼が上がった。 桜色の唇が、微笑みの形を作りだす。 「わかった。必ず、この人をここへ連れて来るよ」 艶やかな光を宿すその瞳を見た瞬間、俺は明確に悟ってしまう。アスカがどんな手段を使おうとしているのか。 俺の心を全て見透かすかのように、アスカはきれいな形の唇を開く。 「試してみる……?」 不意に漂ってきた甘い匂いが、鼻腔を刺激する。 花が虫をおびき寄せるために放つ、妖しくも馨しい香りに理性は狂わされる。 じっと見据える魅惑の眼差しに、俺は絡め取られ、捕らわれた。 その一瞬で真っ逆さまに深みへと堕ちていく。 押し倒して唇を重ねると、柔らかな舌先が誘うように歯列をなぞってくる。 その舌を掬うように咥内に引き込んで絡めていけば、合わさる唇の隙間から甘い吐息がこぼれた。 「……ソファ、汚れちゃうよ」 唇を離せばそんな風に言って淫靡な微笑みを見せる。汚れてもかまわない。ここはもともと俺の部屋ではなかった。 アスカの着る服の裾から手を差し入れれば、しっとりとした肌が掌に吸いつく。 「全部、脱いで……」 そう言いながらアスカは起き上がって俺のシャツに手を掛ける。啄ばむようにキスをしながら着ている服を脱がされ、ベルトのバックルに手を掛けられた。 慣れた手つきで下着ごと下ろされれば、熱を持ってそそり立つものが窮屈なところから解放され、震えながら出てくる。硬く勃ち上がる半身にアスカの手がかかり、ゆっくりと扱いていく。滑らかな手つきは、初めて触れるはずのそこを知り尽くしているかのように快感を引き出す。ぞわぞわとした感覚が、波打ちながら背筋を這い上がった。 愛おしそうに俺のものを見つめていたアスカは、ゆっくりと股間に顔を近づけて赤い舌先を出した。欲しい餌を与えられた猫が丹念にそれを味わうかのように、何度も先端を舐め上げる。 温かくぬめる感触に目を閉じて身を任せれば、そのまま奥まで一気に咥え込まれて思わず声が漏れた。 時折軽く吸いつきながら舌を絡めて上下させていく。その巧みな愛撫に感覚を委ねるうちに、身体の中心へ向かって急速に熱が集まり始める。 何度も押し寄せる波に浚われそうになるのを息を吐いて逃がした。さらりとした髪を撫でれば、アスカは上目遣いで俺を見つめてくる。 ゆらゆらと情欲に潤んだ、美しい瞳。 「……アスカ……」 名を呼べば視線がふわりと緩んだ。それが微笑みだと気づいたときにはその口の中に熱をぶちまけていた。 断続的に放たれる精を全て口内で受け止めたアスカは、名残惜しそうに俺のものから手を放して、当たり前のようにこくりと喉を鳴らして飲み込んだ。

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