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act.6 Platinum Kiss 〜 the 1st day 2 ※
「気持ちよかった……?」
濡れた唇を軽く舐めて、確信的にそんなことを訊く。
呼吸を整えながら頷くと、アスカは満足げな顔で口づけてきた。
「……ん……っ」
絡め合った舌を解いて桜色の唇を舐めれば、色味を帯びた声が微かに漏れて鼻に抜ける。
唇を離して首すじに吸いつくと芳香な花の匂いにまた性欲を刺激されて、達したばかりのものが再び硬さを増していく。
甘く香る身体を味わいながら、身に纏う衣服を1枚ずつ脱がしてしまう。着ているものを全て取り払えば、アスカのものは既に濡れそぼり勃ち上がっていた。
片手で握り締めてゆっくりと扱いていけば、上擦った甘い声がこぼれ始める。
「あ、あ……っ、ん……」
先走りを擦り付けるように手に絡めて動かすと、卑猥な音が室内を濡らしていく。
「……は……っ、あぁ、あ……っ」
淫らに声をあげるアスカはこの上なく美しく、その姿は俺の中にある暗い記憶を刺激して呼び覚ます。
いつしか花の匂いが辺り一面に充満していた。
「んっ、……あ、イく……ッ」
ぶるりと大きく身体を震わせた後、アスカは断続的に下肢を強張らせる。
放たれる熱い蜜を俺は掌で受け止める。収縮が収まるや否や、アスカは荒く息をつきながら指を伸ばして俺の手から白濁を掬った。
「ねえ、早く……欲しいよ」
脚を広げてやや屈み込みながら小さな蕾に指を滑らせたかと思えば、目を閉じてそのまま自らの中に突き立てるように挿れていく。
「んっ、……ふ……っ」
ひどく淫猥な光景だった。一人で快楽に耽る行為を呆然と見つめていると、幾度か指を往復させたところで、アスカがうっすらと目を開けた。
「もう、挿れていいよ……」
その瞳が淡く揺らめきながら俺を見つめる。
まだ性急過ぎることはわかっていた。躊躇う俺に抱きつきながら、鼻先の距離まで顔を近づけてくる。
「カズミさん」
甘く掠れた声でねだられれば、とうに封じ込めたはずの懐かしい想いが蘇り、胸を締めつける。
「カズミさん……」
もう一度名を呼んで、深く口づけてから上に跨ってくる。今にもはち切れそうに硬くなった俺のものに手を掛けたかと思えば、アスカはその上から一気に腰を落としていった。
「あッ、あぁ……っ」
最奥まで飲み込むと、桜色の唇から押し殺した悲鳴のような声がこぼれた。
アスカの中は、ギチギチときつく俺を締めつける。まだ受け容れる準備が整っていないことは瞭然だった。強過ぎる刺激に息を吐いて、思わずアスカの腰を両手で掴む。
「おい、まだ……」
そのまま引き離そうとする俺を咥え込んだまま、アスカが腰を揺らしだす。
「は……っ、あ、アァ……ッ」
上擦った声を漏らしながら、苦痛に眉根を寄せて背中を仰け反らせた。
「アスカ……ッ」
「すぐ……よくなる、から……」
喘ぎ混じりにそう言いながら、上下に腰を弾ませる。
その言葉に偽りはなく、やがて潤滑剤代わりに塗り込まれた白濁が二人の間でリズミカルに濡れた音を放ち始めると、こぼれる声が甘く震えていった。
「あ、あ…っ、ん……ッ」
アスカが身体をこちらに倒してきて、熱い肌が重なり合う。
汗ばむ背中に腕を回して抱きながら、俺はいつの間にかアスカの中に引き摺りこまれて快楽を貪っていた。下から突き上げて強く揺さぶれば、切羽詰まった声をあげながらしがみついてくる。
しなやかな身体から放たれる匂いは、強さを増していくにつれて媚薬のように俺を酔わせる。
「……カズ、ミ…さ……ッ、もっと……」
俺を覗き込むその顔は泥のようにぬかるむ欲に蕩け切っている。けれど、今にも涙をこぼしそうなほどに潤んだ瞳は、遥か遠くを見ていた。
「ん、ふ……あァッ」
泣き出しそうなその顔を見ていると、自分の中で封をしていた感情が呼び覚まされて外へと溢れ出していく。
引き摺り出されるように湧き起こるのは、郷愁に似た想い。それは、幾度も忘れようとした淡く儚い記憶だ。
「アスカ……ッ」
律動はそのままに強引に口づければ、吐息が縺れてもう一段深いところへと沈み込んでいく。
世界を覆すほどの、甘く激しい快楽が身体を突き抜けた。
「──あぁ、あ…ッ、ああ……ッ」
俺を包み込む内壁が強い収縮を繰り返す。しがみつきながら幾度も身体を震わせて果てるアスカの中に、堪え切れずに欲を放った。
互いに強く抱き合いながら、乱れた呼吸を整えていく。
一瞬だけ巻き戻っていた時間が、再びゆらりと動き始めた。
熱を孕んで濡れる身体を離せば、アスカがゆっくりと顔を上げて俺を見つめる。
「……ありがとう」
紡がれた感謝の言葉は、ひどく場違いなものだ。
何に対する礼なのかもわからず、訝しく思いながら顔を覗き込む。澄んだ瞳は艶やかな光を宿していた。
「あなたは、僕と同じところまできてくれる人だ」
同じところ。その言葉が何を暗喩しているのかはわからない。
けれど、それはお前の勘違いだ。俺はお前が決して辿り着けないような地の底に堕ちているのだから。
「僕、カズミさんのことが好き」
唐突な告白に面喰らう。目の前の笑顔はあまりにも浄らかで、眩しさに目を細める。
あれほど淫らに腰を振っていたのに、アスカは穢れを知らないかのような微笑みを見せる。
「身体がベタベタだ。シャワー、浴びてもいい?」
「ああ……」
キスをせがむように顔を近づけてくるから、躊躇いながら軽く口づけた。
「……一緒に入ろう?」
恥じらうように上目遣いでそう訊くアスカを、いつの間にか愛おしい者を見るかのようにこの目に捕らえる俺がいた。
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