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「水じゃ!早う水を持ってこい!!」 「駄目だ足りん!もう無理だ!」 ざわざわ渦巻く人集りを、二人で掻き分けながら進んで行く。 「っ、撫子!」 「ぁ…ぁなた様……は」 燃え行く見世を見ながら震える小さな体を、連れが抱きしめた。 「一体何があったのじゃ!」 「た、竹田様…が……っ」 「竹田…?」 (〝竹田〟とは、あの竹田か?) 政において俺たちより位が二つ程下の者。 撫子がゆっくり指さした先に、役人に取り押さえられている竹田の姿があった。 「おい。これをしたのは貴様か?」 「っ、貴方様が…貴方…お前が、悪いのだ!!」 「……は?」 「お前が梔子を誑かした所為で、私の梔子は…梔子は!」 (何を、言っている……) まるで人間ではないかのようにぎょろりと瞳をぎらつかせた竹田の目が、ある物を捉えた。 「!! その腕飾りは…!やはり、お前が梔子を……!」 「っ、 貴様、これに見覚えがあるのか…?」 「あっはははっ。あぁあるとも、何を言っておる。 ーーそれは、お前が梔子にあげたものであろう?」 「は……?」 ドクリと、心の臓が嫌な音を立てた。 「その腕飾りと同じ物を梔子が右手にはめ、愛でておった…それが許せぬのでなぁ、私が引き千切り、代わりに煙管を押し当ててやったのだ」 「な……ん、だと…?」 「はははっ!それからの梔子は誠に可愛らしかった。従順で、良く鳴いた。 だが、お前が…お前がそれを ーーぅぐっ!!」 ばきぃっ!と頬骨の折れる音がしたが、そんなものは知らぬ。 「…おい、梔子は何処だ」 殴り飛ばした者の胸ぐらを掴み、無理やり起こす。 「その梔子は……〝伊都〟は、何処にいるのだ!!」 『和孝っ』 『ほんとうに?やくそくだよっ!』 『ぁの、御名前は……』 『すみませぬっ。その腕飾りが…気になってしまいまして……』 『まぁ。清水様も口が達者になられましたね』 『ようこそ、おいでくんなました』 『ーー梔子の匂いは、お嫌いですか?』 「梔子は、まだ中にっ!」 後ろから撫子の声が聞こえた。 バッ!と竹田を投げ捨て、近くにある桶をぶん取り頭から一気に水を被る。 「なっ、和孝!」 連れの止める声が聞こえたが、 体ごと一気に炎の中へ飛び込んだーー

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