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【side 伊都】
(ばちが、当たってしまったのだ)
燃え盛る炎を一人ぼぉっと見つめる。
きっと私が欲深いが故に、仏様がお叱りになったのだろう。
『竹田様!?』
『梔子…お前は私の物だ!それなのに、お前はあの男と……!私ではあのお方には敵わん!だが、お前を渡したくはない…
だから梔子……此処で、共に…』
『っ、竹田様!』
それからあっという間に、竹田様の持っていた火が見世全体に燃え移った。
撫子たちは何とか逃げられ、入ってきた役人に取り押さえられた竹田様も外へと連れ出された。
だが、火元になった私の部屋は…もうどうにも助からないようで。
(楽しき、人生だった)
この先竹田様に買われ一生を全うするかと思っていた。
だが、最後の最後に和孝をこうしてまた巡り会えて…誠に幸せだった。
(私が死んだら、誰か和孝の腕にあるあの腕飾りの糸を…切ってはくれぬだろうか)
いつまでも私に縛られることなく、心から愛する女と…今生を共にしてほしい。
……嗚呼、でも。
(最後に、名前を…呼びたかった)
「和孝」と
偽名ではなく、その目を…その顔をしかと見て、お呼びしたかった。
そして、そうして願わくば……
(〝伊都〟と…呼んで、ほ、しかっ………)
立ち込める煙で視界がぼやけ、頭に霞がかかってくる。
そうして、「嗚呼最期なのだ」と目を閉じる耳に微かに響いたような…その物音は
何故か……和孝の声が〝伊都〟と呼んでいるように
聞こえたのですーー
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