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【ねぇどうして? 僕のほうがあなたを知ってるのに。】 夏休みが終わって、あの長年こじらせ続けてた絞り模様の薔薇が結ばれたのを知った。 (うっそでしょ、夏休み中なにがあったわけ!?) 赤薔薇の次は白薔薇かと思ったのに、まさかの絞り模様。 あの人たちはまだまだこじらすと思ってたのに…… (ぐぅぅ…けど、これでようやく絞り模様の指輪も返ってきたのか) 今、校長先生のもとに返った指輪は2つ。 残り13個はまだ誰かのところだ。 歴代とはちょっと違う流れだなぁ、これからどうなるのか…… ボソッ 「ま、僕にはなんの関係もないんですけどね」 あ、申し遅れました。 僕はこの学園のモブ。2年生のしがない村人A、村園(ムラゾノ)と申します。 運命の人でもなければ薔薇でもない、ごくごく普通の一般生徒。 今回のお話は、僕視点からお楽しみくださいませーー *** (んんー、赤と白は早めに結ばれる確率高いのになぁ) 〝薔薇といえば赤と白〟と言われるように、赤薔薇の次は白薔薇が結ばれてる年が多い。 そんな中、今回の白の運命の人はなに考えてるんだか……あいついっつも指輪付けて生活してるし、そんなにゆったり構えてるように見えないんだけどなぁ? 要領が悪いのか? (……あぁ、うん。 同じクラスの僕から見ても要領悪いわ) 歴代の白薔薇の運命の人はスマートな方が選ばれてるのに、校長先生はなんであいつにしたんだ? まったくもって謎、まぁ見てる分には面白いけど。 でもずっと結ばれてなかった色が結ばれたことで、あいつも焦るんだろうな。これからが見頃か…ふはは楽しみ。 今回の白薔薇の子は、歴代と変わらずやっぱり綺麗。 少し静かな性格なのかな?と思うけど、でも「The 白薔薇」ってくらいに白が似合ってる子。 んへへどうやって結ばれてくのかなぁー。じっくり見ていくとしよう。 運命の人と薔薇は、結ばれて指輪を返しにいけば自然と学園中に知れ渡る。 例えそれが男同士・女同士だったとしても、運命ならば関係ないという考えは生徒たちにも定着していて。 勿論、この学園の風習は外へ漏れることは絶対にない。 その辺りはちゃんと校長先生による厳重な警戒があるからなー。しっかりしてるねぇ。 ん? なのに、どうしてただの一般生徒が歴代のこと知ってたり薔薇を見つけられたりしてるのかって?? ーーそれは、僕が大の〝薔薇ヲタク〟だからである。 運命の人と薔薇の詳しいルールは、一般生徒には公開されていない。 けれど僕はそれを、なんと入学前から知っていた。 『こんな面白い学園があるのかっ!? すごい…ぜひ間近で見てみたい……!』 気になるものにとにかくのめり込むタイプの僕は、ネットサーフィンしてたまたま行き着いたオカルトみたいなサイトの記事で進路を決めた。 勉強は死ぬほど大変だったけど、そんなの入学した途端どこかに行ってしまった。 あの記事は本物で、運命の人たちは必死に自分の薔薇を探していて…… はっきり言って、こんなに面白い学校他には無いと思う。 (いや、本当に僕何も関係ないんだけどね。観察するだけでも追いかけてるだけでも十分楽しいんだよねー) 僕も秘密主義だから絶対他言しないし、薔薇が分かってもそれを教えることはやらない。 あくまで傍観者!だってもし僕が首突っ込んで退学させられたら嫌じゃん!? だから内密に…内密に…… だけど、最近気になってる人がいる。 (最近……ってか、前々からなんだけど) ヲタク気質な僕は本を読むことも大好きで。 そんな僕が惜しみなく通う図書室の、もう1人の住人。 ひとつ上の男の先輩で、同じく本が大好きで、いつも優しくて柔らかくて。 ……でも、僕は知っている。 ガチャッ 「三船(ミフネ)先輩! こんにちは!」 「あ、こんにちは。今日も元気だね」 ーーこの人が、〝薔薇〟なんだってことを。

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