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【純粋な君と共に、ゆっくり歩んでいこう。】 「なぁ、お前は白薔薇。俺の薔薇だよな?」 (あぁ、やっと見つけた俺の運命) ずっとずっと、会いたくてたまらなかった片割れ。 もう離しはしない。 大切に慈しんで、そうして2人で愛を育てていってーー 「そう。だけど、まだ嫌。です」 「…………は?」 ーー俺の運命は、こうして始まりを告げた。 *** 「探し物はなんですかっ♪ 見つけにくいものですかっ♪ カバンの中も、机の中も、探したけれど見つからないのに〜♪」 「……おい村園、その歌いい加減やめろ」 「えぇーなんでさ、今のお前にピッタリじゃん」 「だから聴きたくねぇんだよ……」 昼休み。 食堂へ続く道のりで、隣の友人は今日も楽しそうに歌っている。 「あーあへこんでるねぇ。まだダメって白薔薇の君は?」 「はぁぁ……もう訳わからなすぎて頭痛ぇ」 「まぁまぁ、そう簡単に運命なんて掴めませんよねぇ〜」 ついこの前、俺は自分の薔薇を見つけた。 ひとつ下の今年入って来た1年生。 名前は、椎名 雪(シイナ ユキ)。 夏休み明けのテストも終わり、現在学園では次に行われる体育大会の準備が進められている。 俺は来年生徒会長として生徒会に入ることが決まっており、その前練習で運営委員会を仕切るよう任された。 今は各クラスから出ている委員を集め、何度か会議を開いていて。 椎名は、それに参加している委員の1人だった。 きっかけはなんとなくだが、仕事で話すにつれ段々「もしかしてこいつが俺の薔薇なんじゃ…?」と思うようになってきて。 思い切って聞いてみた結果、大正解。 俺の運命の人としての使命は、終わりを迎えた はずだったのにーー (くそ、俺に〝無いもの〟ってなんだ?) 『まだ〝無い〟から、嫌です』 告白して早々、バッサリ切り捨てられた。 普通だったらそんなことありえない。 だが、真っ直ぐに否定してくる椎名はその〝無いもの〟を見つけるまで俺を認めず、指輪も返しには行きたくないらしい。 はっきり言おう、俺は運命の人として完璧だ。 まず、俺の両親もこの学園の出身。運命の人と薔薇の関係から結ばれ、そのまま結婚した人たちだ。 だから幼い頃から運命に関して耳にタコができるほど聞いてきたし、俺もいつかはそんな人と出会うのだと思ってきた。 運命の相手について、きっとどの運命の人よりも長く考え心構えをしてきている自信がある。 なのに、なんであいつは断った? 理解できなすぎて、まったくわかんねぇ…… 「あはは、焦ってんねぇ〜四ノ宮(シノミヤ)くん」 「当たり前だろ。俺は白薔薇としても遅れをとってんだ」 〝薔薇といえば赤と白〟と言われるように、毎年赤薔薇と白薔薇は早く結ばれている。 だが、今年は赤薔薇の次に長年拗れていた絞り模様が来て、その後に緑薔薇と続いた。 あぁ情けない。歴代の白薔薇をやってきた人たちにも、ずっと運命を学んできた自分自身にも。 だからさっさと想いを結び合って、指輪を返しに行きたいのに。 (俺には、なにが無いんだ……?) 「んん〜そうだなぁー。 もうちょっとよく観察してみたら? あの子のこと」 「あぁ? 椎名をか?」 「そ、僕みたいにヲタクになってみるといいさ〜」 「……それがお前からのアドバイス?」 「んふふ。まっ、後は頑張ってくれたまえ。 観察がはかどるぞ〜あぁ楽しいなぁ〜〜」 ポンっと肩を叩かれ「腹減ったー!」と食堂へ入っていく背中。 薔薇ヲタクみたく俺もあいつを追いかける……か。 (一理あるかもしれないな) 椎名雪のことを知ったら、少しは見えてくるものがあるかもしれない。 それが結果的に村園を楽しませることになるのは無性に腹立つが、俺もがむしゃらに動いてみるか。 運命を前にして本気にならない奴は、きっといない。 今が、これまでの人生の中で1番の頑張りどきのはず。 ここで気合入れてあいつを振り向かせて、指輪を返しに行ってやる。 「っしゃ、やるか」

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