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「ねぇ〜どう思う高くん!?」
「んぁー……別に」
「はい出た沢尻。その対応良くないって」
「だって俺らがどうこう言えねぇだろ」
「そうなんだけどさぁ……」
土日、学校が休み。
俺は決まって高くん家に行く。
高くんは別の高校だけど、うちの学園の一般生徒と変わらないくらいの範囲で運命の人と薔薇の話をしている。
信頼できるし、口硬いし。
「でも、あの啓介がそんなこと言ってんならもうちょいなんじゃねぇの?」
「けどここ最近のゆっこちゃん本当可愛いの。化粧とか研究してて髪も結んでたの解いてさ、なんかいい匂いもするんだよね。
他の奴から告白されちゃわないか心配で」
「いいんじゃねそれ? 逆に刺激になるだろ」
「そっち!? 俺やだよ〜ゆっこちゃんはけーすけとじゃないと嫌だー!」
「あーはいはい、お前も大変だな」
グイッと手を引っ張られ、寝転がってた高くんの腕の中にすっぽり収まった。
着ている服の柔軟剤の匂いがして、思わずむぎゅっと抱きつく。
「んふふ、高くん好き」
「ふは、伊月ほんと考えることころころ変わるよな」
「いいじゃん俺は今が大切なんですー。ね、ちゅうして?」
「ん、ほら」
ふわりと重なる唇。そっと閉じる目。
俺はゲイで、高くんとは中学を卒業する直前から付き合い始めた。
高くんはゲイじゃないけど、でも俺のこと好きになってくれた人。
そんな高くんが、俺は大好き。
『あのさ、お前ちゃんと伊月のこと好きなのかよ』
これは、初めて2人に高くんを紹介した時けーすけが言ってくれた言葉。
小学生から男が好きなのを自覚してて、それを言ってはいけない事もわかってて、なのに何故か周りにバレて孤立してしまって。
友だちなんて、できたことがなかった。
そんな中、高校に入って初めてできた友だち。けーすけとゆっこちゃんは俺がこんなでも引かずに話してくれて、一緒にいてくれて。
そんな2人に隠し事はしたくなくて、正直に彼氏がいることを話したら『紹介して』と言われた。
『こいつ本気でお前のこと好きなんだからな。
ただの興味本位とか遊びとか、そういうやつなら今すぐこの場で別れろ』
『え、ちょっ、けーすけ』
『伊月黙ってて』
『ゆっこちゃんまでっ』
けーすけを止めようとして反対にゆっこちゃんに止められ、お洒落なカフェの中ハラハラ見守るしかなくて。
『偶然知り合ったんだっけ。ねぇ、それ本当?
噂ってすごく広まるから怖いよね、だから伊月も勉強頑張って知り合いのいない学圏に来たんだろうし。
もし伊月の噂で手出したんなら、許さないから。
今までいっぱい傷ついてきたこの子をもっと傷つけるとか、私黙ってないよ?』
『同感だ。大体中学卒業前に付き合い始めたとか、単にこいつのこと離したくなかっただけなんじゃねぇの?
ちゃんと愛情持ってんのかよ』
『ーーっ、』
2人とは、出会ってまだ間もない頃。
それなのに、こんなにも自分のことを大事に思ってくれてる。
それにどうしようもなく驚いて、言葉がでてこなくて。
『……あぁ、大丈夫だ』
『本当かよ』
『本当だ。俺は遊びとか冷やかしとか、そういうので伊月といるんじゃない。
大切に思ってる。恋人としているつもりだ。
性別抜きにして、俺はこいつのことが好きだよ』
『っ、高、くん』
『同性で普通より生きづらいだろうけど、でも将来のことも考えてる。だからこのまま続けばいいと思ってるし。
……ってな感じで、お前らが心配しなくても伊月は愛されてるんで。
おい伊月、お前ちゃんと俺の事説明しなかったのkーー』
『え、伊月?』
『〜〜っ、ふ、えぇ』
初めて言われた、温かい言葉。
高くんからの愛と、けーすけとゆっこちゃんからの優しさでいっぱいいっぱいになって、消化しきれず涙が出てきて。
『みんな、だいすきぃ……っ』
『うぅぅ…伊月〜!』
『ちょ、ゆっこまで泣くなよややこしくなるだろ!?』
『は? お前ら本当なんなの』
ボロボロ泣く俺とゆっこちゃんを、高くんとけーすけがなんとか引っ張って店から出してくれたのが4人で会った初めての事だった。
それから、何回か4人でお出かけして遊んでる。
2人がいるから俺は高くんと別の学校でも寂しくないし、いつもいつも楽しい。
ーーけど、
「ふ、ぅっ」
キスの合間に服の中へ手を入れられ、ゾクリと背中が震えた。
(もしも、本当にもしも)
けーすけとゆっこちゃんが結ばれて、俺がいらなくなっちゃったら……
俺はまた、今までみたいに孤立してしまうのだろうか。
あの温もりを知った後に、広い学園の中で1人。
そうなっちゃったら俺…どうやって乗り越えればいいのかな。
でもせっかく結ばれた2人の邪魔はしたくないからな、やっぱり離れていかないといけないのかな。
(それは、やだなぁ……)
「んぁっ」
「は、可愛い声」
乳首をキュッと摘まれると同時にわざと口を離されて、不意打ちで喘いでしまう。
「ちょっと高くん!?」
「ははは、このまま抱いていい?」
「っ、うん、いっぱいシて………あぁっ」
首元へ強く吸いつかれると同時に、潜っていた手が服の中で暴れ始めて。
段々激しくなるその行為に、必死に背中へしがみついて溺れた。
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