60 / 84

1

【お前を忘れて生きるなんて、無理だ。】 「あの……八雲(ヤクモ)くんが、ドット柄の薔薇ですよね…?」 放課後、誰もいない空き教室。 呼び出された先には、俺の運命の人とかいう奴。 校則違反とかしたことなさそうな髪型に、眼鏡をかけていかにも真面目そうで、真っ直ぐ見てくる瞳は透き通っていて ……あぁ、本当にさ。 「指輪…私持ってるんですが、八雲くんはどうですか?」 遂に来たこの瞬間。 他の薔薇なら、きっと泣いて喜ぶんだろう。 けど、残念。 「あぁ持ってる。 でも、俺 お前と結ばれることは無いから」 首から下げていたチェーンを外し、カチャンと指輪ごと床に落とした。

ともだちにシェアしよう!