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秋風が吹き始めた2学期半ば。 学園は今、文化祭へ向け本格的に動き始めている。 「…………」 そんな中、1人。 正直今日は準備を手伝う心持ちじゃない。 運命の奴とは、初めて話した。 元々話す気がなかった。興味なかったから。 (そういや、指輪あのまま出てきたな) いらないと言っても「卒業するまでは持っておれ」と強引に渡されたもの。 まぁ運命の奴のとこならいっか。俺から返しても受け取ってもらえないし、あいつからならいけるかもだし。 そのまま床に放置されても、別にいい。 下駄箱から靴を出して、カバン片手に校舎を後にする。 寮住みだけど寮に帰る気はしない。 このまま外へ行こうか、それともーー (……あ、) 門の先、ワイワイ楽しそうな2年グループ。 その中に、先日結ばれたらしい小里彩がいた。 買い出しに行くのか、みんなで紙を片手に行く店の順番を話している。 ふと、何気なく顔を上げた小里と目が合った。 女の格好してたのにもう普通に過ごせてるのは、運命の相手や周りの奴らのお陰なんだろう。 良かったじゃん、いい奴らに囲まれて。 じぃ…っと見てくるのに薄く笑い、こちらから目を逸らしてグループの横を通りすぎる。 誰が薔薇なのかには大体気づいているが、仲間意識とかはない。話しかけられたら話すくらい。 基本そうだ、俺は誰だろうと自分からはいかない。 だから友好関係が、ただ浅く広いだけなんだろう。友好なのかもわからないが。 「…………」 今日は、なんだかアイツに逢いたい気分。 見慣れた場所に向かって、ゆっくりと歩き出した。

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