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[◯月△日◇曜日 本日の天気 くもり]
早乙女 未紅ちゃん。
もう名前から可愛い、名字も。
低い身長に肩へ付くか付かないかくらいの髪、ボブだっけ? 表情も柔らかくて女の子の中の女の子というか、守ってあげたくなる感がやばい。とにかく〝可愛い〟って言葉が似合う。
少し前に結ばれた緋薔薇も可愛かったけど、あれは作り物みたいなお人形的可愛さだった。だから2年でも目立ってたし。
対して未紅ちゃんは地味な可愛さのほう。なんだろうな…小さい花みたいな。気づかず通り過ぎるけどよく見たら可愛いの咲いてるわっていう。
内気で恥ずかしがり屋ですぐ赤くなって。もうほんとに可愛い。
そんな子に俺は入学早々一目惚れした。
そして確信した、あの子は俺の薔薇だと。
入学式前に渡された指輪。
『君は〝紅薔薇の運命の人〟じゃから、探すのは〝紅薔薇〟だ』と言われ、校長先生の教えの元じっくり生徒を観察。
結果すぐ見つかったというわけ。
だって一目惚れ=運命だろ?
もう俺未紅ちゃん以外視界に入らないしまじで未紅ちゃんしかない。名前に〝紅〟が入ってるのも一緒だし、絶対未紅ちゃんが紅色の薔薇の指輪持ってると思う。
それを聞いて、早く告白して、指輪を返しにいきたい。
去年よりめちゃくちゃ活発に動いてる薔薇たちに俺も続きたい。
次こそは紅薔薇が!
………と、思ってるのに
「だぁぁあ難しい!!」
ダァンッと勢いよく机に伏せる顔。
クスクス笑う一の声が聴こえるまでが最早デフォ。
『ごめんねっ、これから次の授業で使う用具取りにいかないといけなくて』
ついさっき訪ねたとき言われた台詞。
昨日も、結局『今日日直でこれから日誌貰わなきゃなんだよね』と十ちゃんと職員室へ向かうところだった。
いつもこう。
いつもいつも毎回何かしら予定があったり教室にいなかったりで未紅ちゃんとすれ違ってる。
見事なまでに全然喋れてない。
(1年のときからずっとってすごくない??)
もう2年目なんだよ追うの。
いや運なさすぎ、運命なのに運ないとかどんなダジャレだ。
けど多分、もうそろそろ俺の番が来ていい頃だと思う。
だって2年の薔薇も動いてきてるし? この流れに乗って俺もちゃちゃーっと言っちゃえばいけるんじゃ的な??
「…けどま、なかなか大変ですねぇ……」
「あははっ、こーやど〜んまい」
「っあーもー軽いなお前相変わらず!どうせ関係ないとか思ってるだろ、十ちゃんだって悩んでるかもしれないんだぞ?
まだ指輪返してないんだし」
「ん〜あいつはな〜〜」
「そもそも一は十ちゃんのためにこの学園来てんだからちゃんとサポートしないと駄目じゃん、家族だろ」
十ちゃんも俺と一緒の立場。
十ちゃんは〝濃紅色薔薇の運命の人〟だ。
『紅オソロだね〜〜』と貰ったとき話した。
運命の人に選ばれたから十ちゃんはここに来て、一も手伝うよう家の人に言われてここに来て。
十十木家って結構歴史古いからな。早めに結婚相手見つけときたいんだろう。
厳しい中で育った双子の将来を、俺も幼馴染としてサポートできたらなと思う。
(……でも、現状サポートしてもらってるのはどうも俺のほう…)
「ほら、今日も一緒に飯食べよってさ」
一の手の中で揺れるスマホには4人のトーク画面。
きっと十ちゃんが言ってくれてるんだ。1年の頃から未紅ちゃんと仲良くて本当は2人で食べたいだろうに、いつも声かけてくれる。優しい。
なんやかんや言いながら、結局隣で慰めてくれる一も…優しい。
俺は本当にこの双子に甘えっぱなしだ。
だから、もっとシャキッとしなきゃいけない。
もっと頼り甲斐がある、これまで結ばれてる運命の人たちみたいな強い人に。
(……よし!!)
だから、こんなことではへこたれないのだ!
「一、昼ご飯まで授業頑張るぞ!!」
「お、元気でてきた〜? こーやはその調子が1番。
うんうん、それで〝また〟4人で話そうね」
「おう!」
「クスクス、こーやはかわい〜ね〜」
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