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[本編]1

【ただ真っ直ぐに、あなたを愛していました】 「おはようリシェ。今日もとても麗しいね」 「おはようございます、パドル様。 勿体ないお言葉有難うございます」 朝。 時間通りに起き、侍女と共に身支度を整え隣の部屋へと向かう。 「……あぁ、上から下まで完璧だ。流石は私が教えた子。 少し前までは正装すらまともに着られなかったのに…やはりお前は〝あの〟王妃と違い本当に優れている」 「そんなっ、パドル様の教え方が上手なんです」 「クスッ、いい謙遜だ。 さぁ、今日も朝食を兼ねてテーブルマナーから始めよう。その後はいつも通り勉強を。復習はしているな?」 「はい、勿論」 「よろしい。では席についてーー」 この世には、男女の他に第二の性と呼ばれるものがある。 成人する16を前に行われる血液の検査で、 王族等ひと握りの強い者には〝α〟が 騎士や平民など一般的な者には〝β〟が そして王族・一般問わず奇跡に近い確率で生まれる〝Ω〟が、それぞれ診断される。 Ωの存在は貴重で、診断されるとすぐ国王のいる城へ送られる仕組みだ。 Ωは男女問わず妊娠することができ、その赤子は必ず性がαと決まっている。 確実にαを産むにはΩが必要不可欠。 その為、どの国でも跡継ぎやより強いαを求め王族がこぞって欲しがるのだ。 王国セグラドルでも、それは同じだった。 だが、この国はここ十数年全くΩが現れず皆頭を抱えていた。 『王族どころではない。国王陛下の世継ぎがお生まれにならない』 『このままでは他国に攻め入られてしまう。なんとかせねば』 国王は必ずΩと番になり次の世継ぎを産む。 それがこの国の決まり。そうやって代々国王の血を絶やさず繋げてきた。 だが、今の国王へ時代が変わってから全くΩが現れない。 このままでは我が国は終わりだ、他国の植民地となってしまう。 『この際もう女でもいいのではないか? 何人も娶りαが生まれるまで産み続けるのはどうか』 『それだと時間がかかってしまう。第一、受け継がれてきた国王の血を簡単に他へ与えてはならん。 友好関係を築いている国からΩを貰うのはどうだ?』 『貴重なΩをそう簡単に譲ってくれるだろうか。なにか大きな見返りが必要なはずだ』 城の者総出で幾重にも議論がなされ、数年。 『申し上げます! 今年成人する者の診断に、Ωが現れました!』 ーー遂に、時は動いた。

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