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「痛くはないか?」
「全然っ!大丈夫です」
「そうか」
風呂が終わって、大きな手がゆっくりと足をマッサージしてくれる。
初めは申し訳なくて縮こまってたけど、段々慣れて今はすごくリラックスできてて。
(手、気持ちい……)
大好きな番の匂いと温かな手の温度に、ほぉっと息を吐いた。
あの日、ロカ様から話を聞いてアーヴィング様へ運命のことを言った。
そしたらすぐ抱きかかえられ陛下の元へ連れて行かれて、その場で『運命だ』と宣言してくださって。
『その言葉を待っておった。王族へは私から伝える。
だが、全てを止めるのは難しいかもしれぬ。
ーーだからさっさと噛め、アーヴィング』
『っ、は!』
その帰り道、『今すぐ噛みたい』と医務室にいる医師たちに出て行ってもらい頸を噛まれた。
(あの時の感覚は、今も残ってるなぁ)
痛いのを想像していたのに、幸福感と満たされる甘い痺れに涙が止まらなくて。
自分じゃ上手く見えないから、時々触っては思い出し笑いをしてる。
けど〝頸を噛む〟という行為は、αにとって相当興奮するもののようで。
噛んでもらって以降「俺の前ではなるべく頸が見えない服を着てくれないか」と言われてしまっている。
(……我慢、させてるんだよね)
ロカ様も、頸を噛まれた後の陛下は凄かったと話をしてくださった。
それを僕の身体を優先して耐えているアーヴィング様。
番として、本当に申し訳ない。
大分回復して、今は医務室でなくアーヴィング様と共に過ごす部屋で生活していて。
本当に後は体力だけ。歩いたり走ったり、日常生活に問題ないくらいの力が戻れば完璧なんだけど……
(…………っ)
僕だって、早く抱かれたいよ……
「ーーリシェ」
「?」
「正直、今俺に嗅覚が無くて良かったと思う」
「へっ?」
若干赤い顔が、困ったように溜め息を吐いた。
「そういう顔をされると流石にキツい。
これに匂いまであったらと思うと、俺はきっと無理やりにでも食っていた。
だから…頼むから、そんな美味そうな顔をしないでくれ……」
「っ、」
(そ、そんな……)
そんなの、全然。
傷も平気だし、心配しなくてももう大丈夫だと思うし。
そりゃぁ、最中には気は遣われるかもしれないけど、でももう我慢なんかして欲しくない。
僕だって貴方が欲しい。本当の意味で番になりたい。
なので……その、
寧ろ、
「た、食べられたいんです、けど……
いかがでしょうか………っ」
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