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「そっちのクラス進捗どうたった!?」
「問題なかった!予定通り進んでる」
「こっちやばいかも!何人か加勢に行ったほうがいいっぽい!」
「まじ!? どこっ!?」
文化祭が近くにつれ、バタバタ慌ただしくなってくる実行委員会。
初めこそキャッキャしてたのに、気づけばみんな鬼の形相で動き回っていた。
(忙しすぎて、もう生徒会云々言ってる場合じゃないよね…あはは……)
本当、このままあっという間に委員会終わるといいなぁ。
「唐草くん!」
「ぁ、はいっ」
「ちょっとこのクラスの応援行ってくれない? 人手が足りないらしくて、文化祭までに間に合わないかもで……」
「わかりましたっ」
「有難う!よろしく!」
先輩委員の指示を受けパッと立ち上がった。
(なんか、逆に一息つけたかも)
そのクラスは正に猫の手も借りたいレベルに遅れまくってて、着いた瞬間「外の看板塗ってほしい!」とペンキと筆を持たされた。
「こんな感じ…で塗ってけばいいかな……?」
教室から少し離れた庭での作業。
校舎のざわめきが響いてきて、少し気持ちいい。
風も涼しくて、一人きりの空間にほっと息を吐く。
僕のクラスは進捗大丈夫だったっけ?
何気に仲良いから、多分みんなでわいわい進めてるはず。
僕全然手伝えてないし、委員会終わったらちょっと行ってみようかなぁ。
(あ、でも委員の僕が見に行くと逆に慌てるかな? このままでいっか…でも万が一遅れてたら手伝いたいしなぁー)
「わ、上手に塗れてるね。でもここちょっとはみ出てる」
「ぇ、どこっ?」
「ここ」
指差す綺麗な手と、ふわりと香る爽やかな香水。
「俺修正するから、唐草君そのまま進めて?」
「ぁ、はい…………って」
勢いよく隣を見ると、キラキラの笑顔。
「か、かか、会長っ!? どうしてここに」
「ん? なんかこのクラスすごい遅れてるって聞いて加勢しに。そしたら唐草君見つけたからさ。あ、筆一本借りるね」
「どうぞっ」
(いや「どうぞ」ってなに!?)
いつの間にいたの!? 全然気づかなかった。
嘘でしょ、会長と2人きり……?
心臓がドクドク鳴って一気に体温が上がってくる。
2人きりなんて〝あの日〟ぶりで…顔なんかまともに見れるわけ、なくてーー
「……ねぇ。唐草君ってさ、俺のこと苦手?」
「へっ?」
風がサワリと吹く中、ポツリと呟かれた。
「いや、なんか俺と話すとき毎回緊張してるというか、委員会中も妙に避けられてる気がして……俺なんかしたかな?」
「ぃやそんなことっ!会長はなにもしてないです!」
違う、貴方は本当になにもしてない。
(これは僕の問題なんだっ)
「ぁ、ぁの、僕地味だし平凡というか…そんな感じで……友達だってクラスにしかいないし。だから、その、僕なんかが王子様と話すのはおこがましいというかーー」
「それ」
「ぇ?」
「その〝王子様〟っていうの、やめて欲しいな」
慣れているかのような、苦笑気味の曖昧な笑い顔。
「みんな言ってくれるけどさ、俺全然王子様じゃないよ。いたって普通の人間で、普通にヘマするし抜けるとこあるし…多分生徒会メンバーに聞けばその辺沢山教えてくれるはず。
友達は浅く広くって感じで実際仲良いのは一握りだから、唐草君と同じくらいの人数かな? 容姿は1番関係ないよね、大事なのはそこじゃないと思ってるし。
後は…そうだな……好き嫌いが結構あるよ。野菜だったらトマトは敵だしナスは論外でピーマンなんてもってのほかだろ?それとキュウリなんてのもーー」
「っ、あははは!」
(待って、トマトが敵なのっ?)
ナスは論外でピーマンはもってのほか? 何それ聞いたことない、会長好き嫌いがあるの?
「ほら、ね? 全然王子様じゃないだろ?」
「っ、ぁ……」
「俺は見本のような人じゃないし全然完璧じゃない。
だから、王子様って呼ぶの禁止。分かった?」
「は、はぃ……すいませんでしt」
「謝るのも禁止。次いでに目線下げるのも禁止ね。
ちゃんと俺の顔見て」
空いてる方の手がそっと顎に添えられ、クイッと上を向かされた。
「唐草君はさ、全然地味でも平凡でもないよ。俺と一緒の〝普通〟の子。
だから〝僕なんか〟とか言わなくていいんだよ?」
「っ、普通に…見えてますか……?」
「うんうん、普通以外のなにものでもない。みんなそうだよ」
(よ、かった……)
その〝みんな〟の中に入れてるだけでも、十分。
「ん〜後はそうだな。さっき笑った顔凄い可愛かったから、もっと笑うといいと思うなぁ」
「えぇっ!?」
「あ、驚いた顔も可愛い」
「!?」
あははと目の前で笑いかけてくれる会長に、もう頭がパンクしそうで。
「ねぇ、苦手なことは焦らず少しづつでいいんだよ。俺も野菜嫌い克服頑張るしね。
俺のことは〝明先輩〟って呼んでよ。折角同じグループなのに〝会長〟ってのもなんか遠い感じがする」
「ぁ、ゎ、かりました……あかり、先輩っ」
「クスッ、うんうん。
おっし、じゃぁさっさとこれ塗り切って他の手伝いしよう、本当まじで間に合うか心配。
……ってか、手始めにメガネ取ってコンタクトにするなんてどう? なんか君の顔にその大きな額縁は合ってない気が…」
「ぇ、そ、そうですかっ?」
いや貴方のその性格が…その優しさが王子様なんですよとか、やっぱり何かキラキラしててひぇぇってなります!とか、そんなことを思いながら
〝明先輩〟とせっせと手を動かした。
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