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25.最終話

 「あっ、(スバル)! ドコ行ってたんだ? 授業サボって」  林田とは違う方向から声がして視線を向けると、クラスメイトで中学から仲のいい桧山(ひやま)が俺を見て、……なんでか眉を顰めてた。  桧山のち○こは、まぁ俺よりちょっとデカいくらいのあんまり変わんないサイズ。  身長も5cmぐらいしか変わんないもんな。  そんなガッツリボリューミーじゃなくて、綺麗な色をしてる。  俺が視てきたち○この中でも、5本の指に入る美チンだと思う。  流石親友。俺は誇らしいぞ!  まあ、橘の御神木とは違って、視てもときめかないけど。  イケメンなのに遊んでなくて、なかなか真面目なヤツだ。  面倒身が良くて、付いたアダ名はおかあさん。 「……なんで橘と一緒なの? 手、繋いでるし」 「ん? なんでって、俺と橘ちょー仲良しなんだぞ~」  目の前で抱き着いてみせると、桧山の眉間の皺が深くなる。  ……なんだろ? 橘と仲悪いのかな?  イケメン同志のライバル意識? 「はっ!? バスケ部とかよ……」  バスケ部と……?  桧山のバレー部とバスケ部って、仲悪いんだったか?  ……ま、いいや。 「それより何ソレ? 筆記具持ってドコ行くの?」 「次、教室移動で化学室だぞ」 「えーっ! 俺のは!? お母さんっ」 「誰がお母さんだ。お前のは自分で持って来なさい」 「ケチーッ!」 「早く来いよ。6時間目はサボらないように」  一瞬機嫌悪そうなのはなんだったのか、桧山はいつもの調子で手を振って、笑いながら先に行ってしまう。  握ったままの手をクイクイッて引っ張って、こっちもちょっと難しい顔をしてる橘を呼んだ。  ふ、と俺を見下ろした時には、緩んだ優しい表情に戻ってる。 「ね、橘。今日、部活ある?」 「いや、今日は無い日だけど」 「じゃあ、一緒に帰ろ! 俺、教室に迎え行く! 何組?」 「E組」 「わかったー」 「待ってるな」  また頭をポンポンしてくれるから、もっと嬉しくなって、笑顔で手を振って別れた。  ……あ、しまった! トイレ行って手洗う前に頭撫でられた。      * * * * * * *  「すーおーう、見てたぞ~」  ニヤニヤと笑いながら長身の男が近づいて来る。  幼馴染で同じ部活動の南だ。 「なんだよ、蘇芳(すおう)。あれ、愛しのスバルきゅんだろ?」 「まあな。5時間目屋上にサボり行ったら、付き合えることになった」  フッと笑みを零しながら答えたのは(たちばな) 蘇芳(すおう)で、苦笑した親友にゴツンとやられてもそのニヤケた顔は崩れない。 「マジで!? ……もう、1年以上か?」 「1年半だ。入学式の日、名前聞いた時が始まりだから」 「そうか。……良かったな」  黙って頷いたその顔は見たこともない程晴れやかで、南は更なる苦笑を禁じえない。 「じゃあ、今日放課後、聖女から合コンのお誘い来てるけど……?」 「不参加で」 「りょーかい、お嬢様は全員、俺がお持ち帰りしまーす。お前狙ってる子達には、カレシが出来ましたー!って言っとくな」 「俺がカレシで周防がカノジョ」 「……ニヤケ顔ムカツク」 「悪い。暫く治まりそうもない」  普段は余り動かない表情筋をゆるゆるに緩ませながら髪を掻き上げる親友は、クールなイケメンのイメージを捨て去りながらもすこぶる幸せそうで……。  南はポケットからスマートフォンを取り出し、合コン不参加の旨、Limeを打った。 『ごめんね(。>ㅅ<。)  俺と蘇芳、しばらく合コン行けません』  虚しい出会いよりも、たとえ相手にされていなくとも、今日は本命と一緒にいたい。  自分も、帰りに誘ってみようか……。  犬猿の仲と称される、バレー部の美人キャプテンが脳裏に浮かぶ。  親友の心情になど気が回らないほど浮かれている橘は、周防の去った方向を見つめながら、暫く楽しそうにほくそ笑んでいた。  ───スオウじゃん! お前クラス何処になった?  名前を呼ばれて振り返った先、声を掛けられたのは自分じゃなかった。  自分よりも大分背の低い、可愛らしい顔の新入生が「C組~」と答えた。  その笑顔にズキュンと撃ち抜かれた心臓。  火照った顔、回らぬ頭でクラス分けの紙を見れば、自分の名前をG組に見つけた。  同じ列上に幼馴染の南の名があったとして、それがなんだと言うのだ。  随分と落ちた気持ちで、教室のドアの上の1年C組のプレートを恨めし気に睨んだ。  いつ自分の名を明かそうか。  きっとビックリする筈だ。  驚いた顔は、さぞや可愛いのだろうと。  長身で少し強面の男はその表情を想像しながら顔を緩ませ、放課後を待ち遠しく思うのだった。        ─おしまい─

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