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気になるあいつ
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昔から人付き合いが苦手で、話すことも話しかけることも下手な俺。いつしか人と関わることが嫌いになった。別に誰かと仲良くしたいなんて思っていなかったし、する必要もないと思っていた。そんな性格を嫌だと感じることもここ数年はなくなっていたのに、最近になって自分の性格を激しく恨んだ。
初めて日比谷と話した日から2週間ほど経ったが、あれ以来何も会話をしていない。ずっと気になっているけど、相変わらず口下手な俺は話しかけられずにいた。話すきっかけなんてないし、急に声をかけても絶対怪しまれる。
あの日みたいに放課後残っていたらまた話せるかな……と、わざと帰る支度を遅くしてみたものの、リア充共が教室で駄弁っているしいつの間にか日比谷は帰っているし。色々試してみた結果失敗が続き、現在に至る。
そして今日、俺は日直である。今日はパシリではなく本当に。でもあの日はたまたまで、今日彼が教室に残る保証はない。
ようやく訪れた放課後、やはり期待は外れた。帰り支度をする生徒の中に日比谷はいなかった。席も片付けられており、もう下校したのだろう。俺はがっくしと肩を落とし、日誌を書き始めた。
騒がしかった声がだんだん遠ざかっていき、筆記音だけが虚しく響く。1人教室に取り残された。1人でいることなんてもう慣れっこなのにな……。これが寂しいという感情なんだろうか……。とても久しぶりに感じるものに戸惑いを隠せずにいた。
適当に日誌を書き終わらせ、力なく冊子を閉じた。今日もいつもと同じ1人の帰り道。つまらない1日が終わり、そしてまたつまらない1日が始まる。面白くない人生だ。
そう思いながら席を立って鞄を手にし、帰ろうとした時。
目に映るのは1人の男。眼鏡をかけた細身の男。日比谷だった。
驚きのあまり凝視してしまった。夢とか見間違えじゃないよな?でもあいつは間違いなく日比谷本人だ。何やら鞄に何かを入れている。
前とは違って、いつも通りの眼鏡姿。その奥の瞳が真っ直ぐにこちらに向けられ、思わずドキッとした。視線が結ばれたような気がして胸が熱くなる。
なんでここにいるんだろう……?さっき帰ったんじゃないのか……?てかこいつ本当にかっこいいな……。色んな想いが込み上げてくる。
「なんだい?」
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