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反響
*
あの読書発表会から1週間ほど経ったある日のこと。休み時間に本を読んでいると、こんな会話が聞こえた。
「だから!ホントだって!」
「えっ、この前のおまじない?」
「そうそう、あれはやばい!」
おまじないという言葉にドキッとした。また陰口か?恐る恐る顔を上げると、少し離れたところでクラスメイトの男女3人が話している。
そしてそいつらがなんとこちらに向かってきた。嘘だろ、カツアゲかなんかされるのか、俺……?どうしよう、本を読んでるふりをするか……そうこうしているうちに彼らは俺の席の前で止まった。
公開いじめか何か悪口を言われるか。前の読書発表会の件についての文句か。嫌な予感しかしない。
やつらのリーダーっぽい男が俺に話しかけた。
「あのさ、この前のおまじないなんだけど……」
やはりおまじないか。何か苦情でも言われるのだろうか。冷や汗が出てきた。ぐっと手に力を込めた。
「あれ、やってみたらかなり効果あったんだ!」
「えっ」
ふいに体の力が抜けた。前にいるやつらは俺の様子も気にせず話を続けた。
「前発表してたおまじない。実は帰ってからやってみたんだよ。そしたら昨日好きな子と一緒に下校できたんだ!」
「こいつ結構ミーハーなところあるからさー。あのおまじないの紙、大事に鞄にしまってるんだって」
「しかもこいつの好きな人、学校の中でも可愛いランキング上位なんだよ!」
俺はきょとんとその姿を見ていた。まさかのおまじないを実践した報告のようだ。しかも効果があったらしい。正直彼の好きな人が誰とかそんなのはわからないが、どうやら恋愛成就が叶ったらしい。
「そ、そうなんだ。それはよかった」
「いやー、こっちこそ感謝するぜ。俺脈ナシだと思ってたからさ。ホントに効果あるんだな」
その男子生徒は満面の笑みを浮かべている。見る限り、嘘ではなさそうだ。
「日比谷くんはともかく、川下くんがそんな発表するなんか意外だったよ」
「でも結構面白かったよな、2人とも発表上手かったし、センスあるよ」
「他に当たるおまじないとかあったら教えてくれよな!」
3人が楽しそうに俺に話しかける。ずっと人と話せなくて、最近になってやっと日比谷と話せるようになった。まさか他のクラスメイトから声をかけられるなんて、想像もしてなかった。ただ、あの発表をしてよかったと思えた。日比谷のおかげだ。
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