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志津と一葉
*
日比谷に告白して1週間ほどが過ぎた。ついに彼から連絡が来た。
「この前の返事をしたいから、放課後いつもの空き教室に来て欲しい」と。
もうすぐ夏休みが始まる。補習があるとはいえ、日比谷に会える頻度も下がってしまう。もし振られてしまったら……どんよりした夏休みを送るんだろうか。また俺はひとりぼっちになるのかな……。いや、そんな弱気になったらだめだ、いつもどおりに……!
お馴染みの空き教室に、俺と日比谷が2人きり。何度も経験したけど、今日は特別緊張している。
「1週間も待たせてしまって申し訳ない」
「い、いやっ、急だったから早く返事をしろって言われても困るよな」
俺より少し背の高い日比谷が、真っ直ぐに俺を見下ろしている。彼の口からどんな言葉が出てくるのか。期待と不安が混ざり合う。
ゆっくりと唾を飲み込む。これから、日比谷の答えが返ってくる……。この瞬間を見逃さないよう、俺は彼を見つめた。
日比谷は静かな口調で呟いた。
「川下。この前のあれ、もう一度聞かせて欲しい」
「あれ……?」
「うん。君が僕に言ってくれた言葉。もう一度聞きたいんだ」
予想外の発言。それって、もう1回告白しろってことか……?思い出しただけで顔が熱くなる。
「も、もう1回か……。恥ずかしいな……」
「お願いだ、川下」
緊迫した表情でそう言う日比谷。冗談ではなく本気なことが伝わり、俺は覚悟を決めた。あの日、なんて告白したかな……。思い出そうとすればするほど、言葉がまとまらない。いや、もう思い出すんじゃなくて、今心にある想いを伝えよう。
息を軽く吸い込み、俺は日比谷と見つめ合った。
「好きだ。初めて会った日から惹かれてた。それは友達以上の感情で、会うたび話すたびにどんどん好きになっていった。例え指1本触れられなくても、俺は日比谷を守りたい。辛い時も楽しい時も一緒にいたい」
気持ちが溢れ出す。とどまることを知らずに。日比谷の笑顔も真面目な顔も切ない表情も……全部全部……
「愛してる」
それが、俺の想い。俺の日比谷に対する気持ちだ。
気持ち悪いって思われても構わない。ただ、どうしても伝えたかった。
日比谷の顔を直視する。思わず逸らしたくなっても、絶対によそ見しない。
これでいい。俺の全てを捧げられた……。
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