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日比谷は今まで見たことないくらいに目を丸くしていた。そして、眼鏡の奥の瞳が透明な湖のように揺らめいていた。
やがて目を細め、無邪気な子供みたいな笑顔を見せた。儚くも切ない、でもあどけなさもある笑顔で……。
「嬉しい。ありがとう」
日比谷の笑顔。美しくて幼い。これが、本来の姿なのかもしれない。トラウマを抱え、本当の自分を見失った。でも少しずつ自分を取り戻し、今の日比谷がいる……。
日比谷はその表情を浮かべたまま、唇をそっと開いた。
「僕も君のことが好きだ」
嘘、だろ…………?目の前の日比谷が揺れ動く。俺の聞き間違い……?でもすぐそこに、触れられる距離に日比谷がいる。笑っている。触れていなくても温もりを感じる。
思わず涙が出そうになる。俺は必死で堪えた。俺の想いが、日比谷に通じた。
「えっ、ほ、本当に…………?」
「本当だよ。嘘なんて付かない。君が好きだ」
「日比谷…………」
「最初は友達……。少しずつ親しくなって、いつしかそれは深い想いに変わり、気づけば愛情になっていた。君の存在が、全てが僕の歯車を動かしてくれた」
未だに信じられなかった。相手は男。まさか両想いになれるなんて……。でもこの胸の温かさは夢じゃないんだな……本当に、想いが通じ合ったんだ……!
「本当に、俺でいいのか?斎藤でも他の人でもなく……?」
「僕は君がいい。斎藤はよき友達だよ。彼は僕を助けてくれた。それはきっと、彼の数多い友達のうちの1人としてね。でも君は僕だけを見つめてくれた。たくさんの人が生きる中で、たった1人、僕を見つけてくれた。僕の心を戻してくれた……」
「嬉しい……すごい嬉しい……」
「僕はね、愛情に飢えていたんだ。誰からも愛されない、って。だから君と出会って愛を知った。生きる意味、愛されること、そして愛することの喜びを……。誰の愛でもいいわけじゃない、君がいい、君が欲しい」
日比谷は真面目な表情に戻り、少し低めの声で甘く囁いた。
「愛している。世界中で1番、誰よりも」
まるで世界中の時間が止まって、俺達2人が残されたような、そんな気がした。こんなに誰かから愛されるなんて……俺の方こそ初めてで、体も心も全て日比谷の色に染まっている。
夢にまで見た両想い。狂おしいくらいに日比谷が愛しい。日比谷の全てが大好きだ。
「やべ……死ぬほど嬉しいわ、俺」
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