5 / 42
玄愛《雅鷹side》4
だから、中学の卒業式の日に告白した。
哀沢くんは驚いていた。
「本気で言ってんのか?」
「本当に好き。大好き」
俺の言葉を聞くなりため息をついて、冷たく返した。
「お前が俺を本当に好きなら受け入れない」
「俺はお前を好きにならない」
「好きなんて言葉聞きたくない」
「好きになったら友達を辞める」
淡々と、静まる教室に冷たい言葉がずらり。
哀沢くんの傍に居られなくなるなら、好きだってことは隠そうと思った。
だから、それからは『好き』って言葉を封印したんだ。
友達でもいい、
傍に居られなくなるなら、気持ちを殺すよ。
「冗談だよ。友達として好きってこと。高校も同じだし、また一緒にいようね」
「あぁ」
本当は恋愛感情の『好き』だけど、
傍に居られるだけで幸せだからこの距離でいいんだ。
それでいいと思ってた。
「つまり片想いっつーわけか」
「まぁね」
高1の時にアヤちゃんとは仲良くなって、「炯と付き合ってんのか?」って聞かれたから答えてあげた。
「好きになったら友達辞めるって言われてるから、どうしたらいいか分からないんだよね」
「意味不明だな。変な奴」
告白も出来なくて、
友達を続けるしかなくて、
本当は好きで、
大好きで、
「好きでいるの苦しいよぉ…」
「な、泣くなよっ!俺だって片想いなんだから」
アヤちゃんも愁ちゃんに片想いをしていた。
だからお互い頑張ろうって言ってたのに、高2の夏に二人は恋人同士になった。
俺だけ取り残された気分になった。
まぁ、二人が恋人同士になれたのは俺も嬉しいんだけど。
「雅鷹、お前このままでいいのか?」
「よくないけど…でも…」
気付けばもうすぐ冬休みで、俺が哀沢くんを好きになって3年が経っていた。
このままでいい。
このままじゃ嫌だ。
色んな感情が葛藤して、毎日苦しくてたまらない。
好きと言えば、友達ですらいられない。
でも告白しないまま、悔いた人生を生きるのも嫌だ。
だから、
どうせ離れるなら、想いを告げて砕けよう。
告白しよう。
また、哀沢くんに想いを告げよう。
そう決意した。
高2の冬。
終業式の日。
学校が終わってから哀沢くんの家に遊びに行った。
哀沢くんの部屋に荷物を置いてすぐに告白した。
哀沢くんは2年前と同じで驚いた顔をしてた。
「冗談だろ?」
「冗談じゃないよ。本気で好きなんだ」
声が震える。
2年前の冷たい言葉が蘇ってくる。
この空間に居るだけで泣きそうになる。
「ならもう、俺に近づくな」
その愛しい目で俺を見つめて、
その愛しい声で俺を突き放す。
あぁ、やっぱり。
結果は見えてたはずなのに。
涙が止まらない。
「こんなに…好き、なのに…大切なのに…」
過呼吸になりそうなくらい、泣いている自分がいる。
今まで我慢してきたことが、涙になって流れる。
こんなに好きなのに、
こんなに大切なのに、
どうして届かないんだろう…
「俺は山田を大切だなんて思ったことは1度も無い」
泣いている俺に容赦の無い言葉。
俺は哀沢くんにとってはただの同級生。
そんなの分かってたことなのに。
俺ばかり好き過ぎて、苦しくて、狂いそうだ。
「俺はお前を好きにならない。同情はしない」
もう道は『諦める』しか無い。
だけど諦めきれない。
だって哀沢くんがこんなに好きなんだ。
君が、
「諦める、から…」
欲しい―…
「だから抱いて。それで諦める」
このままじゃ諦めきれないから、せめて一度でいいから哀沢くんを感じたい。
だから抱いて欲しいとお願いした。
「それで諦められるんだな?」
「うん。諦める」
きっと、諦めることなんて出来ないと思う。
だけどこのまま諦めるなんて嫌だから。
「そしたら本当に友達のまま接するよ」
「分かった」
嘘ついてでも、俺に哀沢くんを刻みたかったんだ。
ともだちにシェアしよう!