15 / 42

玄愛《炯side》7

翌日休まず学校に行き、俺が机に座って本を読んでると山田が来た。 「おはよう哀沢くん」 「…おはよう」 俺はいつものように顔を上げて挨拶をした。 「…」 山田は俺の顔を見て、どこかへ電話をかけ始めた。 「もしもし。ごめん。迎えに来て。今すぐ。今日は家に帰る」 専属の運転手に連絡をしているようだった。 電話を切ると、山田は俺の腕を掴み俺の荷物を持って無言で教室を出た。 「おい、山田っ」 靴も履き替えず、シューズのまま俺の手を引く。 山田は校門前に待機している自分の車に近付き、運転手が後部座席のドアを開けた。 「山田!」 山田は俺を無理矢理車に乗せて、自分も乗ってドアを閉めた。 「いいから黙って乗って。車出して。うちまで」 「かしこまりました」 しばらく無言のまま車のエンジン音だけが響く。 30分ぐらい車を走らせると、山田の家に着いた。 そのまま山田の部屋に入り、ソファーに座ることなく山田が口を開く。 「そんな顔、アヤちゃんと愁ちゃんに見せられる?」 「―…どういう意味だよ」 「何かあったんでしょ?」 俺は山田の言葉に反論することが出来なかった。 山田は少し怒りながら俺を見つめて続ける。 「今にも泣き出しそうなのに、泣けない、泣いちゃいけない、そんな顔してるよ。そんな顔を見せたら2人が心配する」 山田は俺の心を揺さぶる。 制御していたのに。 俺は涙が出なかったわけじゃない。 泣いてしまえば雅彦が死んだ事実が突き刺さるから。 だから無意識に泣かないように制御してたんだ。 「それを隠すために無理して笑うの?ていうか笑える?それすら出来ないような顔に見えるけど?」   本当は今でも辛くて、泣き出したいくらいなのに。 自分でも感情がおかしくなっているのが分かる。 泣きたいのに、泣けない。 どうすればいいのか分からない。 「俺は昔、泣きたいのに泣いちゃいけない環境にいたから。自分の感情押し殺すのに慣れてるけど」 山田が俺をソファーに座らせる。 そしてしゃがんで俺の顔を覗き込んだ。 「哀沢くんはダメだよ。そんなこと覚えなくていい。ちゃんと泣かないとだめだよ。大丈夫だから。気の済むまで泣いていいんだよ」 「別に俺は…」 否定しようとした瞬間、山田が俺を抱き締めた。 まるで泣いてる子供をあやすかのように優しく包み込む。 「哀沢くん…俺の胸で泣くと、子供はすぐ泣き止むんだよ。よしよし、いっぱい泣いていいんだよ」 まるで雅彦のような台詞を言う山田。 …保護者かよ。 「―…っ!」 気付くと俺は山田の前で声を出して泣いていた。 山田は俺が泣いてる間、無言で俺の背中をさすり、頭を撫でて抱きしめていた。 雅彦とは体格が全く違ったが、心地よさは同じだった。 だから気の済むまで泣いた。 なぁ、雅彦 俺を愛してるんだろ? じゃあなんで死んだんだよ? 死んだら何もねぇじゃねぇか。 残るのは記憶だけ。 行き場の無いあんたに対する俺の気持ちだけ。 なぁ、 俺を愛してるって言ったよな? もう1回言えよ。 頼むから言ってくれよ。 ―…どうして死んだんだよ どのくらい時間が経ったか分からないぐらい泣いて、しばらくすると山田が沈黙を破った。 「哀沢くん、パフェ食べよっか?生クリーム大量のやつ」 「………………食う」 山田は俺の頭を撫でて、部屋を出て、またすぐ戻ってきた。 「アソートケーキもお願いしてきたよー!哀沢くんケーキ好きだもんね」 山田は俺が泣いた理由を聞くことなく、まるでこの件が無かったかのように接してくれた。 また山田に救われた。

ともだちにシェアしよう!