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1.馬鹿な親友1

中学からの友達、相馬(そうま)は馬鹿だ。 馬鹿で、下半身と頭がゆるい。 だと言うのに、高校に入ってから彼女を切らしたことがない。 整った見目と、明るくマメな性格故なのだろう。 俺は友達だから、友人として良いヤツだというのは分かっているけれど、告白されて付き合う度毎回フラれているのを見ると、恋人としては不適合な男なのだろうと思う。 2年生の2学期、高校に入学してから付き合った彼女の数は、この1年5ヶ月で5人。フラれた数は、4回。 単純計算、ワンシーズンごとに彼女を替えていることになる。そしてその計算は、ほぼ間違えていない。 「角谷(かどや)ぁ…」 いや、5回になったみたいだ。 「なんで皆嫌がるんだろう……」 外階段の踊場に2人。 心底悲しそうな顔をして、相馬は溜め息を吐き出す。 「なに、嫌がるって?みんなあっちから告ってくんだろ?」 「そーだよ。しかもちゃんと、彼女と別れてフリーになってから告ってくれるんだ。イイコ達だよね~」 「ソウデスネ、イイコデスネ」 女子達が、相馬が別れるタイミングを虎視眈々と狙ってることなんて、こいつは馬鹿で脳天気だから気付きもしないんだろう。 「でもさ、付き合った期間も長くなって、そろそろいいかなぁってお願いすんだけどさ、そうすっとなんかフラれちゃうんだよね。 そのたびに、この子も俺のことホントに好きなワケじゃなかったんだぁって……。 角谷、俺悲しいっ!」 「ばかっ!抱きついてくんなよっ!」 「なんだよ、お前も冷たいぞ!さては角谷、実はお前も俺のこと好きじゃないんだろー!?」 抱きついてくる男の腕を払い退けただけで、とんだとばっちりだ。 「で?お前は彼女達に何をお願いしてるって?」 「うん、お尻に挿れさせてって」 「は………?」 「いや、だからさ、お尻に挿…」 「何言ってんだお前っ!馬鹿だろ!!」 馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたけど、まさかJK相手になんつーアブノーマルな…!! 「AVじゃねーんだぞ!」 「えー?だってさ、兄ちゃんが男と付き合っててさ」 ……今、ドえらいカミングアウトが聞こえてきたぞ…? いいのか?それ、本人以外が他人にバラして……。 弟の相馬自体は、全然気にしてる風でもないから構わないかもしれないけど。 「んで、普通にヤるより、後ろのが10倍気持ちいいぞーって言うんだ。だからさ、俺 彼女達に頼んだんだけど、引かれたり逃げられたり、酷いときは叩かれたりして…で、フラれて…」 「…なんて頼んだんだ?」 「ちゃんと言ったんだよ、俺。男同士が気持ちいいって聞いたから、お尻でヤラせてって」 「…………」 馬鹿だ。こいつ、馬鹿すぎる……。 それじゃあ、アブノーマルな女の子相手でも、じゃあ男とヤれよ!ってことになっちゃうだろう。 馬鹿だ、相馬(そうま) 一翔(かずと)…… 「なんでうまく行かないんだろーっ!?」 そんなうがーってなってるとこ悪いけど、分かんねーのはお前だけだよ。 だけどこいつは馬鹿だから、説明してもきっと理解できないだろうし。 「……お前もさ、来る者拒まずじゃなくてさ、ちゃんと初めに、ヘンタイ的な性癖持ちだけどいい?って訊くとか…」 「ヘンタイじゃないよ!?俺!」 いやいや、変態だろうが。 「……あっ!」 なんだよ…、嫌な予感………

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