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第15話 どういう風の吹き回しでしょう?★

「僕は、自慰をするだけで周りの魔族を巻き込んで殺してしまうんです」 「……は?」  バーヤーンがこちらを見た気配がする。いきなり何を言い出す、と思っただろうか。ニコはぐす、と鼻をすすると、腕で涙を拭った。 「きみを、殺さずに済んだと思ったらホッとして……」  お父様との約束なんです、とニコは続ける。 「無駄な殺しはしないって。お父様も『洗礼』を受け、その理不尽さと痛みが分かるひとでしたから」 「お父様って……王族だろ? 馬鹿か手を出したそいつら」  自分を棚に上げてそんなことを言うバーヤーンに、ニコは軽く笑った。身体の揺れが繋がっているバーヤーンにも伝わったらしく、彼は軽く息を詰める。 「でも、その時にお父様は助けられたから僕が産まれたんです。そのまま放置されていたら、僕はこの世にいなかった」 「……」  だから『洗礼』を止めさせたいんです、とニコは伝える。バーヤーンに全部は理解できなくても、自分の信条は知っていて欲しい、そう思った。  彼に背を向けているので、バーヤーンはどんな表情をしているのかは分からない。でも黙ったまま聞いてくれているので、少しは伝わったかな、なんて思う。  すると、前に回ったバーヤーンの腕がきつくなった。同時に軽く揺さぶられて、声を上げてしまう。 「はあ……萎えるわ」 「あっ、や……っ、……萎えてなんかないじゃないですかっ」  言葉とは裏腹に、バーヤーンの熱は上がっていった。そしてすぐに息を詰め動きを止める。その間もギュッときつく抱きしめられ、耳元で弾んだ吐息を聞かされニコは震える。どうやら彼はまた、ニコの中に熱を放ったらしい。 「きみを殺したら、悲しむ魔族がいるでしょう?」  そう言い、バーヤーンの顔を見ようと振り返った。そしてドキリとする。  興奮で頬は赤くなっていて、綺麗なグレーブルーの瞳は静かに、けれど激しい感情を湛えてニコを見ていた。半開きの唇からは熱く湿った吐息が出ていて、ニコの頬に当たる。  完全に、ニコに欲情している顔だった。  自分の誘惑の力は、バーヤーンをこんな表情にさせるほど強いのか。  ともすれば唇が触れそうなほどの距離で、少しの間見つめあってしまった。ニコは動けず、バーヤーンの顔がさらに近付いてもそのままでいた。 「──い……っ、た、ああっ!」  唇に触れるかと思ったバーヤーンの唇は、少しずれて顎骨を噛んでくる。そのまま彼は動物のように唸りながら、ニコの孔を激しく突いた。 「だからこんなに飢えてんのか……それで俺がおびき寄せられてんだな……っ」  いいぜ、利用されてやる、とバーヤーンはまた唸って中に雄の証を放つ。すると、下腹部からぶわっと熱が全身に広がり、ニコは全身を痙攣させながら絶頂した。 「……っ」  はあはあと、二人して落ち着くまでそのままでいると、バーヤーンが後ろから抜けていく。それすらも甘い刺激になり、ニコはビクビクと背中を反らした。 「はは……いい眺め」  バーヤーンはニコの尻の肉を掴んで広げている。三度も達した精液はすぐに溢れ出て、ニコの白くて柔らかい太ももを汚していった。熱い体液が身体を伝う感触にすら震え、ニコはズルズルとその場にしゃがみこむ。 「()かったか? 淫魔様」  悦いなんてもんじゃない。こんな、あらゆる刺激がすべて絶頂へ向かうようなほど感じられるのは、やはりとても相性がいいのだと思う。 「おい」  ぐい、と髪の毛を掴まれ顔を上げさせられた。身だしなみを整えたバーヤーンが、ニコのそばに座っている。その顔は、意外と真剣だった。  ニコは視線を逸らして呟く。 「……笑わないですか?」 「聞いてみなきゃ分かんねぇ」  ニコはジワジワと顔がまた熱くなった。実は夢でも現実でも、まだバーヤーンとしかしたことがないと言ったら、彼は笑うだろうか。インキュバスなのに実はキスもしたことがないのだと、言ったら馬鹿にされそうだ。 「……ふーん?」 「な、なにニヤニヤしてるんですか……」  どうやらニコの反応で、バーヤーンは何となく勘づいたらしい。 「きみは慣れていますよね……」 「あ? こんなもん遊びだろ」  なんの臆面もなくそう言うバーヤーンは、ニコとはまったく考えが違うことに気付かされる。バーヤーンは立ち上がると、気持ちよさそうに伸びをした。 「身体が軽い。お前とするのもメリットがあるってことか」  じゃあこれからは校内での『洗礼』は止める、とバーヤーンは言う。またどういう風の吹き回しだとニコは眉根を寄せるけれど、彼は「倒すより、取り入った方がいいと判断したんだよ」と笑った。 「……きみはどうして、そこまでして力を見せつけたいんですか? 見る限り、弱いものいじめはあまりしていませんよね?」 「前も言っただろ、必要だからだ」 「だから、どうして?」 「……それ以上聞くならもう相手しないぞ」  思ったより頑なな態度のバーヤーンに、ニコは黙るしかない。すみません、と謝ると、彼はふん、と鼻を鳴らして去ろうとする。 「あ、あの!」  ニコが呼び止めると、彼は素直に振り向いてくれた。力が入らない手を必死に突っ張るけれど、まだニコは下半身が丸出しだ。  でももう今さらだ、と彼に思い切って問いかける。 「足に力が入らなくて……屋敷まで送ってもらえないでしょうか?」  バーヤーンに「腰が抜けたとか……!」と笑われたのは言うまでもない。

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