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第4話 前を向かなきゃ

そしたら、ラルフと一生いっしょに、ずーっとずーっと仲良くくらせるのに。 そんな可愛らしい願いは、オレがオメガだって判明したあと割とすぐに、あっさりと打ち砕かれた。 だって、バース性が変わっても、オレ達は何も変わらなかった。相変わらず仲はいいけれど、それだけだ。 落胆した。 一番側にいるからこそはっきりと分かってしまう。 オレは、ラルフの『運命』じゃない。 それならばいっそ、オレもアルファだったなら良かった。それならきっと、「一緒に運命を探そうぜ」って笑えたかも知れない。 オメガなのに。 オレだってラルフの子を身籠もる事ができるのに、アイツが探し求める『運命』には、どうあがいたってなれないんだ。 そう思ったら、アイツの顔を見るのが辛くなってしまった。 アイツを遊びに誘う頻度が減って、アカデミーでも別に行動する事が増えてくると、途端にアイツの周りには人が群れていく。 当たり前だよな。だってラルフは伯爵家の嫡男で、品行方正で、顔も性格もいい非の打ちどころの無いアルファなんだから。 周りに群がる華奢なオメガ達の中に、もしかしたら『運命』がいるかも知れない。アイツの隣はいつだってオレのポジションだったのに、そこには違う人が立つんだって思ったら、悲しくなって一人で部屋で泣いたりもした。 好きなものには一直線、のオレは人の好みもおんなじで、子供の頃からずっとラルフ一筋だったから。 あの頃の初心な傷心が甦ってきて、胸がズキズキと痛む。 とうとうラルフの横に立つ、可憐な『運命』が現れちゃったんだなぁ……。 泣いた。 めそめそとひとしきり泣いて息をするのも苦しくなった頃、オレは無理矢理自分に魔法をかける。 『鎮静』『浄化』『ヒール』『疲労回復』『ハッピー』のミラクル5点セットは、オレが子供の頃からやってる、悲しくてどうしようもない時の特効薬だ。 どんなにうまくいかない事があっても、無理矢理にでも前を向ける。 だから、今回だって、きっと大丈夫。 ミラクル5点セットで頭がスッキリしたら、真っ黒だった気持ちにも僅かに光がさしてきた。 そうだ。仕事しよう。 こんな時は部屋にいたって考えてもしょうがない事をグルグルグルグル考えるだけだ。魔法のスペルを改良する程度の事をやっといた方がマシだろう。 ソファから立ち上がったオレは、身支度を整えて呼び鈴を鳴らす。すぐに扉がノックされ、ウチの頼れるメイド、アリッサちゃんが姿を見せた。 「アリッサ、仕事に行くから車を用意してくれる?」

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