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第3話 オレが『運命』ならいいのに

アイツは大人しくてクソ真面目、読書が好きなくせに剣術だって乗馬だって手を抜かない。マナーだって完璧。これぞ貴族、どこに出しても恥ずかしくないっていう優等生だった。 いっぽうオレは好きなものや興味があるものには一直線、他は何から何までどうでもいいっていう極端な性格で、特に子供の頃には一時だってジッとしちゃいなかった。マナーなんて覚えたのはラルフと結婚しようと思い立ってからだ。親はさぞかし恥ずかしい思いをした事だろう。申し訳ない。 ところがそんな正反対に思えるオレとラルフは意外にもウマがあって、未だにこうして仲良くやってるワケだ。 そんなオレ達にも、もちろん気まずくなった時期だってあった。 それは他でもない、互いのバース性がはっきりした頃だ。 ラルフの方が先にアルファだって判明して、周囲はもちろん納得だったし、オレだって思いっきり祝福した。なんせアイツはほんの子供の頃から『運命の番』に憧れてたって、オレだけは知ってるから。 ちっこくって可愛かったアイツの声、真夏の空みたいにキラキラしてたアイツの瞳、今だってはっきり覚えてる。 「ねぇねぇビスチェ、このご本、見て」 「お姫さまと、王子さま?」 「そうだけど、王子さまはアルファでね、お姫さまはオメガなんだって。アルファはね、『うんめいのつがい』のオメガを見つけることができたら、すっごくすっごく幸せになれて、一生いっしょに、ずーっとずーっと仲良くくらせる、って、このご本に書いてあった!」 「ふぅん、『うんめいのつがい』かぁ」 「すごいよな! おれ、アルファになれるかな」 「なれるといいな!」 あの頃はバースの事なんてあんまりよく分かってなかった上に、そんなに興味をそそられたわけでもなかったオレは、おざなりにそんな風に答えて、期待に胸を膨らませて目を輝かせているラルフをただ眺めてるだけだった。 だって、オレにとっちゃ『うんめいのつがい』なんて会えるかどうかも分からないようなモンより、目の前で笑ってくれるラルフの方が十倍も百倍も大事だったから。 オレがあんまり興味なさそうだって事はなんとなく分かったのか、ラルフはたまにしか『うんめいのつがい』の話はしなかった。 だけど、アイツの書棚にはたくさんの本に紛れてバース性の本が少しずつ増えていってたから、アイツが『運命の番』にずっと憧れを持っていたって事くらい、オレにだって分かってたんだ。 ……オレが、ラルフの『運命の番』ならいいのに。

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