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第6話 閃いた

とりあえず、今日見かけたあの娘が本当にラルフの『運命の番』だったら、オレとラルフの離婚は決定事項だろう。 なぜなら、それがオレ達が結婚する時の前提条件だったから。 そもそもオレがラルフと結婚できたのだって、オレが『運命の番』をダシにラルフをうまく言いくるめたからに過ぎない。 互いのバース性が分かって、オレがラルフとちょっと距離をおいていたアカデミー時代。 皆に聞かれて気がついたんだ。 ラルフにも、そろそろ見合いの話がくるんじゃないかって。 仲がいいんだから、何か聞いてるんじゃないの? もしかして、ビスチェがお相手?  そんなちょっと胸がちくんとするような事も言われつつ、色んな人から探りを入れられていた。 言われてみりゃあ確かにそんな話が出たっておかしくない。 『運命の番』なんて、今やおとぎ話にも等しいくらいにレアな出会いだ。そんなの待っていられるわけがない。だから伯爵家ともなれば、家長の考え方によっちゃあ見合いという話が出ることもある。 ラルフからはそんな話、聞いたことがなかったし、家でもそんな話はなかった。 けれどラルフは嫡男だ。 優秀なラルフに似合いの、可愛くて、マナーも完璧で、社交力もあって、けれどラルフを立ててくれるような、品のいいオメガを嫁に、なんて話が出てもおかしくない。 それはヤバい。 だって、ラルフはとっても家族思いだ。おじさんからそんな風に打診されたら、自分の思いを押し殺して、結婚してしまうかも知れない。 本当は『運命の番』に出会えるのを待ちたくてもできない。 結婚してしまったら、もしその後『運命の番』に出会っても、優しくて真面目なアイツは、結婚相手の気持ちを考えて言い出せないに決まってるんだ。 そこで閃いた。 オレが結婚相手になりゃあいいんじゃん、って。 なんだかんだ言ったってオレだって伯爵家の出身の血統のいいオメガだ。周囲から見てもそんなに妙に思われないだろうし、マナーとか勉強とか頑張って誠意を見せれば、おじさんだってきっと結婚を許してくれるだろう。 オレとラルフならきっと一緒に暮らしても仲良くやっていけるだろうし、もしも『運命の番』が現れた時、オレならちゃんと身を引いてやれる。 いけるじゃん。 どうせオレだって、ラルフ以外のヤツと結婚なんてする気ないんだし。 そうと決まれば話は早い。決めたら即実行あるのみ! オレは思いついたその日に早速ラルフを口説きに行った。 「なぁラルフ、オレと結婚しない!?」

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