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第21話 世界に二人きりみたい

少し元気が出たらしいラルフがオレたち二人を覆い隠すようにシーツを引っ張り上げて、真っ白なシーツの中でオレたちは目を合わせて微笑み合った。 お互いの香りだけに包まれた狭い空間で笑い合う。まるで子供の頃に二人で探検して回った時に見つけた秘密基地にいる時みたいに幸せで、少しわくわくしてきた。こんな無邪気な気持ち、久しぶりだ。 「この世界にビスチェと二人きりみたいで興奮する」 ……ラルフは、無邪気な気持ちじゃなかったみたいだけど。 まぁ、オレまだ突っ込まれたままだしね。 離さない、って言ってるみたいにぎゅうっと抱きしめられてるのは幸せだ。 「……はぁ、やっと匂いがマシになったな。さすがに結構キツかった」 本能を鷲掴んで揺さぶられるような、強烈な衝動だったって言ってたもんな……。 やっぱり『運命の番』には、本来抗い難い魅力があるんだろう。それでもオレを選んでくれるっていうラルフの事、オレも一生大切にしたい。 「ビスチェ……」 「ラルフ、オレを選んでくれてありがとう。もう離婚しようなんて絶対に言わない。一生、一緒にいよう?」 「ビスチェ……! 嬉しい。嬉しいよ、ビスチェ!!!」 ラルフが、オレがプロポーズした瞬間と同じくらいキラッキラの笑顔を見せた。 同時にオレの中のラルフも一気に質量を増した。 ……どんだけ素直なんだ。 もう笑っちゃって、あんなに『運命の番』が現れる日を恐れていたのがバカみたいだと思った。もっとラルフの事、素直に信じていれば良かったんだな。 「ビスチェ……!」 満面の笑顔でオレに口づけようとラルフが顔を近づけてきて……。 「ぐああああ!!!!!」 またも、苦し気に吠えた。 「ラ、ラルフ!?」 「ぐ、ううう……っ、くそ……っ、どれだけ邪魔すれば気が済むんだ……!!!」 「ひえ……」 オレのラルフが、人を殺しそうな顔してる……! 見たこともない凶悪な表情に震えてたら、バタバタと慌てたような足音が近づいてくる。いつもは穏やかで静かな伯爵家において、こんなことは滅多にない。 「ラルフ様! 大丈夫ですか!? 男爵がなにやら薬を使って、娘をヒートに……!」 「分かっている! 一瞬でも早く摘まみだせ!!!」 なるほど、ヒートか。 『運命の番』のヒートなんて、抗える術もないはずだ。 ふーっ!!! ふーっ!!! と荒い息をついて、オレの首元に鼻をつっこんで耐えているラルフがあまりにも辛そうで、オレは震えているラルフのたくましい体を一生懸命に抱きしめた。 ラルフも、縋り付くみたいにオレを抱き返してくれるのが嬉しい。 「くそ……! くそ……! 卑劣な真似を……!」

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