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第28話 番う覚悟が本当にあるのか?
そっとラルフの方を盗み見たら、バチッとラルフと目が合った。
目を細めてオレを見つめて微笑んでる。
恥ずかしくて一瞬で目を逸らした。オレが不安に思っていたことなんて、ラルフにはお見通しだったみたいだ。
***
「アリアナ!」
「ダニエル……!」
恋人達が熱く抱擁を交わす。
かなりの豪邸だったダニエル邸についた時には、ダニエルさん本人が既に邸前まで迎えに出てくれていて、馬車から駆けおりたアリアナ嬢は恋人の胸に飛び込んだのだった。
感動だ。
「無事で良かった……!」
「わたくし、もうダメかと……」
「伯爵が意志の強い方で良かった」
互いに涙を流し、抱きしめ合う姿は感動的で、オレまでジーンとしてしまったくらいだ。
いや、本当に良かった。
ひとしきり抱き合って互いの思いを確認しあった二人は、少し落ち着いてきたらオレたちの元へ戻ってきて、深々と頭を下げる。
アリアナ嬢を恋人の元まで送り届けてそのまま帰るのかと思いきや、まるで申し合わせていたかのような自然な流れで邸の中へと招かれた。商家に相応しいセンスの良い応接室に通されたかと思うと、早々に人払いがなされる。
そして、さっきの感動の余韻は一気にかき消されて、真剣な空気が部屋を満たした。ダニエルさんもさっきアリアナ嬢と抱き合っていた時の幸せそうな様子から一変、顔をこわばらせ、顔色もかなり悪く見える。
アルファ同士は牽制し合うことがあるというから、ラルフが威圧でもしてるんだろうかとちょっと不安に思っていたら、意を決した様子でダニエルさんが口火を切った。
「ミクス男爵の暴挙については、本当に申し訳ありません。男爵を止めていただいたこと、そしてこうしてアリアナを保護してくださったこと、本当に感謝致します」
「ああ、僕にとっても必要な事だったからね、そこは気にしないでくれたまえ」
「それで……お話とは」
「単刀直入に聞くが、君はアリアナ嬢と番う覚悟が本当にあるのか?」
「……!」
ヒュ、とダニエルさんが息をのむ音が聞こえた。冷や汗がドバッと出て、指先がふるふる震えてる。
それでもダニエルさんは顔を上げて、ラルフをしっかりと見据えた。
「はい。そのために今日まで努力して参りました。もしアリアナがラルフ様の『運命の番』だとしても、その気持ちは変わりません」
「ダニエル……!」
ダニエルさんの勇気を振り絞った言葉に、アリアナ嬢は瞳からぽろぽろと涙を流す。
良かったねアリアナ嬢……!
オレまでなんだか胸が熱くなってしまった。
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