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第27話 花は可憐にほころぶ

「よく打ちあけてくれた。君と、その心に決めた人との現況を聞かせて貰っても良いだろうか」 「はい……!」 良かった。ラルフの雰囲気が一気に柔らかくなった。これできっとラルフがうまくやってくれるに違いない。なんせオレのラルフは、誰よりも頼りになる男なんだから。 オレは安心していいよ、と言いたくて、ボロボロと涙を溢しはじめたアリアナ嬢の涙をハンカチで拭い、背中をそっとさすった。 その後オレたちは馬車に乗り込み、アリアナ嬢の彼の家へと向かいつつ、彼女の現況を聞き取っていた。 「へぇ、じゃあ幼馴染なんだ。オレ達と一緒だね」 話しているうちにちょっとずつ打ち解けてきて、オレ達はごく自然に話せるようになっていた。もちろんラルフとアリアナ嬢それぞれに結界と浄化を施してるから、オレ的には実は結構大変だったりする。 「はい。お互いのバース性が分かった時は嬉しくて」 「じゃあお相手はアルファなんだね」 「ええ。けれど彼は裕福な商家の生まれでしたが平民なので、なかなか父の了承が得られなくて……彼自身が興した商会がようやく軌道に乗ってきて、わたくしの家への融資を条件にすれば父の許しも得られるんじゃないかと……そんな時だったんです」 それでも融資を条件にしないとならないのか、と苦い気持ちになる。 オメガにはどうしたって生きにくい世の中だ。 「ラルフ様にお会いした時に『運命の番』かもとは思ったものの、わたくしにも愛する人がおります。ですからわたくしもお父様には知られないようにと思ったのですが」 「護衛の人が報告したって言ってたもんね……」 こくん、と力なく頷くアリアナ嬢。ほんと、つくづく同情する。 「本当に、こんな事に巻き込んでしまって……」 「君のせいじゃないよ。あ、でも、こんな深夜に急に押しかけて、君の彼は大丈夫かな」 オレが心配すると、ラルフが穏やかに笑ってくれる。 「心配ないよ。ちゃんと邸を出る前に先触れしてある」 そして、アリアナ嬢にも安心するように微笑みかけた。 「待っていると言っていたそうだ。快く返答も貰えたそうだから安心していい」 「ありがとうございます……!」 初めて、アリアナ嬢が嬉しそうな微笑みを見せた。 良かった。きっとずっと不安だったんだろう。 花がほころぶような可憐な笑みに、これはきっと彼女のお相手も彼女を手放すなんて無理だろうなぁと素直に思えた。 そしてふと、急に不安になる。 彼女のこんなに愛らしい笑顔を見たら、ラルフも魅了されてしまったりしないだろうか。

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